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2024/11/15

アスリートの、聖地巡礼を考察する

中川淳一郎

「聖地巡礼」という言葉があります。ドラマ、漫画、アニメ、映画、名曲の舞台や登場人物に関連した名所・施設・店舗をファンが訪れる行為です。これがかなりの経済効果を呼ぶ、と各自治体はPRに力を入れていますが、意外とアスリートの聖地巡礼ってあまりないのでは……と思いました。

 

たとえばサッカー日本代表のGK権田修一、DF板倉滉、MF三笘薫、MF田中碧というチームになくてはならない存在の4選手は、川崎市宮前区鷺沼の小学生サッカーチーム「さぎぬまSC」出身です。権田選手は年は離れているものの、板倉・三苫・田中の3選手は1学年違いで同じ時期にチームに所属していました。

 

そしてこの中で三苫選手と田中選手は練習場である鷺沼小学校出身。私もこの小学校に4年生までいたのですが、この4選手が小学生の時どこで遊んでいたのかや好きな店はどこだったのか、といったことは興味が湧きました。何しろ自分と同じところにいたのでは? なんてことを考えると改めてその場所を歩いてみたくなりますし、その店に行きたくなる。

 

私は彼らのファンというわけではなく、「同郷」ということで興味を持ちましたが、ファンであればより強い感覚で彼らの辿った道を見てみたいのではないでしょうか。もしも私が宮前区の観光関連の仕事をしていたら、「鷺沼」をキーワードにサッカーをめぐる「聖地巡礼」のコースを考えると思います。

 

選手のご家族や友人に取材をし、公共の場所はもとより、許可をくれた施設・店の紹介も区のHPやSNSで行う。そうすると、サッカーファンの多くが鷺沼の街を訪れるのではないでしょうか。

 

アニメの聖地巡礼も相当な経済効果をもたらすでしょうが、サッカー日本代表選手の聖地巡礼もかなりのものになるでしょうね。何しろアスリートの経済効果については、テニスの錦織圭選手が「のどぐろ」が好きだと発言したらのどぐろが売れましたし、バスケの八村塁選手がSNSで故郷・富山のスナック菓子「白えびビーバー」を紹介したらバカ売れする。水泳の北島康介氏が五輪で金メダルを取れば、実家の精肉店のメンチカツが売れまくる。

 

さらに言うと、イチローさんが「朝カレー」を食べていると言えば、朝にカレーを食べるムーブメントまで起きる。そういった意味で、地元や関係する自治体の盛り上げにはアスリート関連の情報は存分に集めて何らかの施策を打った方がいいです。

 

何しろ、元祖といえば、巨人の千葉茂さんが1948年に「銀座スイス」でカレーにトンカツを乗せてくれと言ったことがカツカレーの発祥とされ、これが伝説となっており、同店のカツカレーを求める人が後を絶ちません。

 

エンタメ作品とコラボして地域のアピールをすることに加え、アスリートとその地域の情報を綿密にリサーチしてPRに繋げることも重要になってくるのではないでしょうか。それこそ、今の時代、ネットニュースがありとあらゆるネタを乱発している状況です。

 

野球の世界一決定戦・WBCでも、決して強いとは言えないチェコ共和国の選手がSNSに公開した食べ物にも関心が高まったりするわけで、「チェコ代表〇〇選手絶賛!」とかでも十分PRになると思います。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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