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2023/05/30

地方叩きと考察する

中川淳一郎

8月、5日間にわたって千葉市蘇我スポーツ公園にて音楽フェス『ロック・イン・ジャパン・フェスティバル2023』が行われます。2020年までは茨城県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園で行われていましたが、2021年、コロナ拡大を懸念する茨城県医師会の中止要請により開催せず。そして2022年から現在の千葉市での開催になったのです。

 

2019年は33万7914人を動員する一大イベントだったのですが、一挙にその数の観光客を失うことに。医師会の影響力の強さを見せつけました。しかし、2022年からは地元・茨城放送が主催する「Lucky Fes」が開幕されました。これには医師会も反発せず、なぜ2021年はダメで2022年はいいのかよく分からなかったです。

 

最近、高知県土佐市のカフェのオーナーと店長(移住者)が地元のNPO理事長から退去命令を受けたことを報告するツイートが1.1億回アクセスされるなど大反響となりました。両件を見ると、「田舎の閉鎖性」が批判を受けることになりますが、ネット時代、こういったことが話題になると、悪評が多数書き込まれることになります。そして「こんなところ絶対に行かない」と次々と書かれます。さらに「こんな場所だから過疎化するんだ」とも書かれます。

 

こうした件はいわゆる「地元の名士」がかかわると発生しがちなのではないでしょうか。ヨソ者がやってきて勝手な振る舞いをする(ように見える)ことが許せず、その人々への攻撃やいやがらせをするようになる。東北の某県に「医者いじめをする村」「医者がすぐに去る村」として知られる村があります。

 

コロナ以降、リモートワークも開始したことから東京の人口が減少する、といった見たてもありましたが、実際は東京の人口は増え続けています。2022年10月1日時点の東京の人口は1403万人で、前年比0.2%増です。それだけ東京には仕事があるわけですし、進学や就職で東京に来た地方の人も地元には戻りたくないのでしょう。「コロナで散々地元の陰湿さを親から聞かされたのでもう帰省もしません」という声まで地方出身者から聞かれました。

 

この陰湿さというヤツについては、東京出身者である私は「東京にもあるよ」と言いたくなることはあります。というのも、基本的に祭りを含めた地元の行事は商店街や神社の氏子のものであり、新参者は参加できないのです。

 

私は渋谷区に住んでいたのですが、いわゆる「マスオさん」状態でヨソから引っ越してきた60歳男性から聞いた話が印象的でした。

 

「私がここに引っ越してきてから15年後、『そろそろ祭に参加できるんじゃない?』と妻に言われ、祭の主催者にお伺いを立てました。『〇〇さん家のお婿さんだからまぁいいか』と言われ、参加したのですが、酔っ払った2人がケンカを始めたので間に入って仲裁したんですよ。すると『なんだよ、ヨソ者のくせに!』と言われ、殴られました。さらにはその後その2人が一緒になって私を罵り始めたのです。もう絶対に参加しないと決めました」

 

しかもこの祭では、同氏よりも、その地で生まれた2歳児の方が立場が上なのだそうです。それだけ大都会・東京であっても閉鎖的な部分はあるわけで、あまり「田舎の陰湿さ」を安易に言わない方がいいです。

 

ただし、SNSにその陰湿性を書いたり、YouTuberがいじめの実態を書いたりすると、大抵の場合、都会人共感し、その土地をボコボコに叩いてくるので、陰湿ではないことに越したことはありません。本当に「田舎叩き」はネットの華ともいえるものですので、移住者や観光客に対して違和感を持っても嫌がらせをするのは決して得策ではありません。そういった意識改革も必要ではないでしょうか。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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