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2023/05/10

二重価格について考える

中川淳一郎

先日、吉野家の新宿にある店舗が人員不足を理由に休業をしたことがニュースになりました。時給は1200~1500円だったようですが、GW前のシフト変更や春はバイトの入れ替わりがあるなど複数の要因が重なって、こうした措置になりました。J-CASTニュースの取材によると、全国1196店舗のうち、十数店舗が休業になったとのこと。

 

こうしたニュースを見ると、日本の衰退を感じるとともに、地方が生き残るのは観光人材を増やすことがセットであるべきでは…と、今、タイにいる私は感じます。明らかに外国人観光客と地元民の間に「二重価格」が存在し、外国人観光客(および在留外国人)向けのサービスとは別になっているのです。

 

現在すでに外国人から人気になっているラーメン屋やホテルは、今後日本人は商売の対象ではなくなるかもしれません。北海道のニセコのように、外国人に焦点を絞った店舗やホテルも今後各地で作る必要が出てくるでしょう。2500円のラーメンやら、9800円の海鮮丼もこうした場所では普通に食べられるのですから。何しろ日本はサービスや食べ物の質に加え、インフラもレベルが相当高い。アメリカ人からすれば「チップも払わないでこんなにサービスしてくれるの!」と仰天するほど。

 

となると、今後、各地の観光事業者は、日本人を相手にしない「戦略店」を作る必要があるかもしれません。地元で長くやっていた店や宿泊施設は躊躇するでしょうが、地域振興においてはこれも仕方がない。

 

1泊10万円のホテルにしても、海外の人からすれば為替にもよりますが、安いと感じる可能性だってあるわけですよ。日本人からすれば、一泊7000円のホテルでも高いと思う中、1泊10万円の広い部屋を作る方がよっぽど儲かるのではないでしょうか。

 

そうした意味で、すでに人気の観光地となっている自治体は、くまなく高級化する必要はないものの、ソフトランディングのために、海外から来る富裕層向けの旅行プランを真剣に考えるべき時期に来たと思います。

 

本当に悔しかったのですが、時に「世界一の朝食」とも言われるタイ・バンコクのマンダリンオリエンタルホテルの朝食ブッフェに行ったんですよ。周囲には中国や台湾から来たと思われる宿泊客が、優雅に朝食を食べている。一部屋10万円はするような部屋の付属の朝食です。

 

 

ここで外部の非宿泊者は約7200円で食べられるわけですが、入口の門番に4人で食べたい旨を伝えたら「一人7200円もしますが大丈夫ですか?」と言われました。宿泊客ではない日本人ということで貧乏人と思われたのではないでしょうか。その後、代表者の名前と電話番号をメモ帳の裏紙に書かされました。さらに、ビュッフェの終了15分前には、宿泊客には言わない「あと15分ですが……(今、カネ払ってもらえますか……)」と言われたのです。日本もこのようになる未来はあり得るので、一気に冒頭で述べた「二重価格」が現実味を帯びてきます。

 

各種リゾート施設デベロッパーは、国内の有力観光地に「二重価格」の施設をバンバン建設すべきです。そうでもしない限り、日本人は「日本は水がきれいで、四季があって、外食も安い」と永遠に言い続け、変化を恐れる衰退国家になります。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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