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2023/08/25

高校野球と地方創生

中川淳一郎

夏の高校野球決勝当日に本稿は書いております。地方県・地方の市町村において高校野球がいかに大事か、ということを報告します。私は地元が西東京です。2023年は132校ものチームが参加する巨大大会。しかし、毎回西東京大会には関心がなかったです。なんというか、「地元感」が薄かったんですよね。しかも野球エリートが所属する私立高校がほとんどの場合強い。自分の家がある近くの立川高校や北多摩高校、昭和第一学園高校が快進撃を続けたらそりゃあ応援はしますが、いかんせん今回の代表である日大三高がどこにあるのかさえ知らない。

 

しかし、佐賀県唐津市に拠点を移して以降、高校野球の佐賀大会を注目するようになりました。何しろ地元の佐賀新聞では多くのページを割いて地方大会を報じますし、何しろ普段から仲良くしている友人の息子さんが某強豪校の野球部にいる。あと、某高校で「佐賀県を活性化させるにはどうすればいいのか?」というテーマで講演をしたのですが、私に声をかけてくれた先生は、なんとその高校の野球部監督だった。

 

たまたま両校は別のブロックにいて、順当に勝ち上がり、決勝で会えればいいな、と思っていたのですが、そうはならず。佐賀大会終了後、2人と連絡を取り、9月に入ったら唐津で飲もう、ということになりました。佐賀県は36校が県大会に出場しましたが、どこが勝とうが代表は応援しようと考えていました。そして見事鳥栖工業は一回戦突破。2回戦ではなんと日大三高と対戦。当然鳥栖工業を応援しました。鳥栖工業は負けましたが、両チームともあっぱれな試合ぶりでした。

 

そして今、「来年は〇〇(友人の息子)を甲子園に応援に行くバイ!」という話で盛り上がっています。唐津市の観光施設では未だに2007年の夏の大会で佐賀北高校が広島の強豪・広陵高校との決勝戦のダイジェストが流れるほど。それだけ地方にとって高校野球は大事なのです。

 

この時の広陵の投手は広島カープのエース・野村祐輔投手、しかもキャッチャーは後の侍JAPANメンバーの小林誠司捕手。まったく注目されていなかった田舎の県立高校が野球エリート立ち向かう8回裏、球場は異様な雰囲気となり、野村投手の投げたボールがボールになる(ストライクではない)と歓声が湧くという判官びいき状態になった試合です。結局佐賀北の副島浩史選手が逆転満塁ホームランで勝ちました。

 

そこで思ったのが水島新司さん作の漫画『ドカベン』および『大甲子園』です。仮に主人公・山田太郎の高校「明訓高校」が神奈川代表でなく水島さんの出身地の新潟代表だったら……。実際、新潟に明訓高校はあり、甲子園に出場していますが、作中の明訓が新潟代表だったら「聖地巡礼」を含め、新潟は野球ファンにとっての一大観光地になっていたかな、とも思うのです。

 

『ドカベン』の場合、地方大会を描く必要があるため、激戦地の神奈川である合理性はあると思いますが、仮に佐賀代表が甲子園優勝する漫画があったらそれはそれでおもしろい。佐賀に限らず、人口の少ない県の野球部が部員を集めるところから開始し、私立の強豪校からバカにされる様子が初期の頃は散々描かれる。最初はヘタクソだった選手が少しずつ上達し、息子の夢のため、夜は代行業者のバイトをする父親……。各選手の人物像に迫る展開が詳しく描かれついに3年生の夏、甲子園で優勝するという漫画、読みたいなぁ~。

 

意外とウケる気がするのですが、どこかの少年誌にこの企画売り込みたいな、なんて思いました。私の場合は佐賀県代表で、取材旅行等は佐賀県庁とも組んでアテンドしますんで。単行本も佐賀県内でバカ売れするんじゃないですかね(笑)。近隣の大分・長崎・福岡というのも丁度良い練習試合のライバルになりそうで、これらの県のチームもカッコ良く描き、この3県でも売れるようにする――なんて妄想してしまいました。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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