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2023/08/10

地方のチェーン店を考える

中川淳一郎

なぜ東京や大阪が観光客にとって居心地がいいのかを考えたら、「朝から酒が飲める」ということも理由の一つではないでしょうか。もちろん朝から酒を飲む人など少数派ですが、都会だと24時間営業のファミレスやさらには居酒屋まであったりします。地方になるとコンビニでビールを買って宿に持ち帰って飲むしかない。

 

まぁ、需要の有無でしかないのですが、観光客は楽しむために来ているわけですから、朝からやっている飲食店(これも少ないですが)では酒類を置いた方が売り上げが上がるもの。私のような呑兵衛になると、観光の際、朝、店に行く基準はビールがあるかないかが一番重要になってきます。

 

以前、渋谷や代々木八幡を拠点としていたのですが、渋谷だと24時間営業の居酒屋「山家」があり、重宝したものです。代々木八幡の「富士そば」も生ビールがあり、「肉そば」用の醤油で煮た豚とホウレンソウのお浸しをつまみにすると満足度が非常に高かったです。そして締めは春菊天そばを食べる。

 

 

現在私がいる唐津には多くの知人がやってきますが、「福岡に出張で来たついでに午前だけ唐津に行くけど飲めない?」なんてことを言われることがあります。その場合の選択肢は3つあります。一つは駅近くの定食屋。各種調味料に蠅が寄り付かないようにする網(「フードカバー」や「食卓カバー」)がテーブルの上に置いてあるような昭和的雰囲気の店です。ここは7時から開いています。瓶ビールをその時間から飲め、つまみは冷奴やキムチ、イカの塩辛など。他には9時から開くラーメン屋がありますが、餃子をつまみにビールを飲むことができます。3つ目は「資さんうどん」といううどんのチェーン店。駅から遠いですが、肉うどん用の肉やおでんをつまみにすることが可能です。

 

都会がなぜ酒をいつでも飲めるかといえば、富士そばもそうですが、チェーン店が充実しているからなんですよね。チェーン店は日本全体を無個性化する元凶、などと批判する向きもありますが、「朝から酒を飲める」という意味でも私自身は非常に重宝しています。

 

こうした批判は都会の人が地方で「都会と同じ店があると旅情が湧かない」「この街独自の店に行きたかったのにチェーン店ばかりで興ざめする」なんて思うことから発生します。しかし、不思議に思うかもしれませんが、地方の人からするとチェーン店が来ることは喜びなんですよ。

 

2015年、47都道府県で唯一スターバックスコーヒーがなかった鳥取に一号店が開店した日は、1000人を超える行列ができました。この時都会の人は「なぜスタバなんかに並ぶの(苦笑)」といった反応をしましたが、2021年、唐津に一号店がオープンした日も行列はできました。

 

あとは新日本プロレスが興行をした際もチケットが数十分で完売するなど、地方の人にとってはチェーン店や各種メジャー団体・アーティストらのイベントは本当に楽しみなことですし「まさか私達の街に〇〇さんが来てくれるとは!」と感謝されるのです。そしていつしかその団体や人のファンになる。かつて巨人が北海道で試合をして道内のファンを増やしたことがありますが、それに似た感覚といえましょうか。

 

朝から酒が飲める話がなぜかチェーン店礼賛の話に変わりましたが、各種チェーン店はある程度商圏として期待できる地方へ進出するのもぜひ検討してみてはいかがでしょうか。先日も「ついにドミノピザが来た!」と私達の仲間内では話題になったほどですから。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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