PAMPHLETDOWNLOAD
戦う歴史学者平山 優

TOPCOLUMN > ストレスフリーな地域暮らし

2024/12/19

ストレスフリーな地域暮らし

中川淳一郎

最近立て続けに都会の人から聞いたのが、「毎日人が多過ぎてすごいストレスになる」ということです。朝と夕方・夜の電車は満員ですし、駅を降りたらとんでもない人数の人が視界に入る。ランチ時に人気の店に行こうものなら行列に並ばなくてはならない。

 

知人のフリーライターは比較的時間の自由が利くため、平日に小さい息子を連れて中野から豊洲のららぽーとへ行ったそうです。片道なんと1時間半。休祝日だったら片道2時間15分~2時間半ぐらいはかかるのでは。しかも、車を出庫するのに1時間かかるというのです。そして「段々と東京がイヤになっている自分がいる。子どもが大きくなって、屋外で遊んだりするのは地方の方がいいんじゃないでしょうか」なんてことも言う。

 

こうした考えの人こそ、移住PRの対象ではないでしょうか。若者は都会の刺激がまだまだ新鮮で楽しいでしょうが、40歳を過ぎたような人々はもはや刺激は求めなくなっているし、何よりも快適な生活を重視するようになっているように思えます。

 

私は47歳の時に東京から佐賀県唐津市に来ました。東京時代、23時30分に渋谷駅を降りてから、20分後に自宅に着く間、目に入る人々の人数は1万人を超えていたのでは。しかも、吐瀉物が落ちていたり、嬌声をあげる酔っ払った若者が何をしてくるか分からない。フリーランスのため、基本的に打ち合わせは午前11時以降にしていたのですが、取材先の都合等で「9時北千住」なんて言われたら、もうその瞬間から毎日憂鬱になったものです。そして、その朝8時に東京メトロ千代田線に乗ってすし詰めの車内を見た時の絶望ったら…。

 

当然、「お前は甘い!」と言われてしまうのは分かりますが、耐性というものは人によって違うもの。新入社員時代、バス停まで8分歩き、バスに15分乗り、JR中央線立川駅から神田駅まで行き、京浜東北線か山手線に乗り換えて田町駅から徒歩6分。1時間30分から人身事故でもあろうものなら2時間、激混みの電車と道路にい続けたのがキツくて1年2ヶ月でこの生活に音を上げ、恵比寿に引っ越しました。

 

しかし、たったの5駅とはいえ、とんでもなく混む山手線に乗るのが苦痛過ぎて結局自転車通勤になってしまいました。私は25歳にしてここまで都会にストレスを感じていたわけなので、47歳まで残れたのは我ながら十分頑張ったかな、と思います。

 

だから、今後の移住戦略としては、その自治体の魅力をアピールするということに加え、「都会にストレスを感じる人」に焦点を当てたやり方もアリでしょう。とにかく地方の人口20万都市であろうが東京・埼玉・横浜・千葉・名古屋・京都・大阪・福岡のような「人だらけ」という状況にはありません。

 

都会出身者がいきなり過疎の村に住むのは現実的ではないですが、各地の県庁所在地やNo.2~No.3の市であれば、「必要なモノはすべて揃っていますが、混雑しておらず快適でQOLが上がりますよ」というPRがこれからは重要になってくるのでは。

 

「意外と便利ですよ」というのは一見へりくだっているように感じられてしまうかもしれませんが、「あなたが知らない魅力がココにもありますよ」を言ってるわけです。刺激は確かに減るでしょう。メジャーなミュージシャンのライブや人気の演劇、展覧会などは行きづらくなるでしょうが、それを超える魅力があることを伝えるべきです。

 

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

バーチャル背景でリモートワーク、旅の気分を楽しもう!

FREE DOWNLOAD