2025/11/04
熊騒動
最近熊による被害のニュースが騒がせていますが、これ、もっと厳しく対処しなくては過疎化が進むと心配しています。秋田県の鈴木健太知事は、ついに自衛隊の派遣を要請。銃器による駆除ではなく、捕獲への後方支援を求めているようです。しかし、捕獲にこだわると一瞬のスキを突かれて人間が殺されてしまう恐れがあります。熊愛護派からのクレームを恐れているのか、自衛隊法上無理なのかは分かりませんが、襲い掛かろうとする熊を見ても銃を打てないんだったら果たして人命を守れるのか?昨今猟友会もなり手が少なくなったうえに、熊を駆除するとハンター本人にクレームが行ったりするわけで、公式に国の組織に動いてもらう必要があると考えるのは理解できます。
『クマ外傷 クマージェンシー・メディシン』という本を読みましたが、顔面を傷つけられるというレベルではなく、えぐられる写真なども載っています。プーさんのように穏やかでかわいいだけではないのです。2022年11月、長野県松本市では、熊を20年飼っていた75歳男性が、熊に殺される事故があり、猟友会が熊を射殺しました。
20年もよくぞ飼えたものだと思いますが、エサをくれる恩義ある飼い主ですら殺してしまうのが野生動物。ましてや、腹を減らして人里や住宅街に下りてくる熊には人間に対する憐憫の情などありません。ただ、敵であり、エサだと思っているだけです。
このような話をすると「メガソーラー建設を含む人間による自然開発で熊の食べ物のドングリが減った」といった反論が来ます。むしろ、自然を昔のように戻すのが正しい姿である、と。さらには「熊は自然界の食物連鎖の頂点だから、熊を駆除すると鹿が増え過ぎたりして、生態系がおかしくなる」という反論も来る。
いや、鹿だってイノシシだって人里に下りてくるわけで、ただ、熊ほどの攻撃力がないから県知事が自衛隊派遣を要請するような事態にはなっていないだけです。鹿もイノシシも農家にとってはれっきとした大害獣です。地方に住んでいると「せっかく育てたスイカを収穫前に全部食われてしまった……」といった嘆きの声を聞くことができます。
これだけでも大被害なのに、熊は人を殺す。地方創生にあたっては、移住促進策を考えたり、ゆるキャラを作ったりアンテナショップを都会に作るのも重要ではありますが、害獣対策をすることがかなり重要な時代になってきているのではないでしょうか。現にイギリス政府は日本への渡航者に対し、熊に対する注意喚起を行いました。
北海道や東北では登山客が熊に襲われ死亡しています。大学時代、私は登山サークルに入っていましたが、熊よけの鈴を常にリュックサックにつけておくことを推奨されました。1993年から1996年の話ですが、「まさか熊なんていないよ(笑) それに、熊に遭ったら死んだふりすればいいんでしょ?」と舐めていたのですが、最近の報道を見るとこれが実に甘い考えだったことが分かります。
メディアは当然、熊出没や熊被害があると府県名を見出しの冒頭に持ってきますが、これだけ被害が多発すると、特定の県全体が熊だらけでいつ死ぬか分からない、といったイメージになりかねません。メディアは注意喚起の面もあるのでしょうが、何しろ興奮して連日トップニュースに持って来る。これは知事だけでなく、県や市町村の観光協会、役場も対策を講じなくては外から人が来なくなるどころか、熊被害を避けるため、熊のいない九州などに引っ越す家族が増えるかもしれません。
先祖代々の土地がある農家を除き、正直その土地で仕事を見つけるのはなかなか難しい。そんな現状があるため、都会に引っ越すことへの躊躇のハードルが低くなったかもしれません。
前秋田県知事が発言したクレーム電話をしてきた人間に熊を送り付ける、というのはやり過ぎではありますが(本気ではないと思いますが)、そろそろ地方の危機として熊及び害獣問題は国会でも扱うべきでしょう。特に東北・北海道の国会議員はその問題提起をしてもらいたいです。


