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2025/08/20

コロナがもたらした排外主義

中川淳一郎

8月11日、デイリー新潮に『秋田県は「未曽有の人口減少」から抜け出せるか? いまだ影を落とす「コロナ禍」がもたらした“分断”とは』という記事が登場しました。秋田県のほとんどの駅前商店街がシャッター街になっており、休日でも人が歩いておらず人口減少が止まらないという現状を報告します。

 

「秋田県人会あきたいざたん」を代表の高橋純一氏へのインタビューで構成されていますが、高橋氏は、秋田と縁のない人にいきなり移住してもらうのはハードルが高いため、縁やゆかりのある人をターゲットに移住を促進する取り組みをしています。具体的には県外に出た出身者ですね。

 

これは非常に現実的な路線だと思いますが、このインタビューには一つの重要な地方創生への示唆が含まれています。それは、コロナ騒動の際、様々な知事が「今は帰ってくるな」と県外に住む人に強く呼びかけたことについての言及です。動画で佐竹敬久知事(当時)は「県外から家族や親戚を呼ばないで下さい」と語りましたが、高橋氏はショックを受けたと言います。

 

〈帰るのはダメなんだと、まるで故郷から拒絶されたような気持ちになり、いまだに帰りづらいと言って、コロナ禍が始まってから一度も帰省していない人もいます。年に4回帰っていた人が、1回しか帰っていないなんてケースはザラです。コロナ禍で県内在住者と県外在住者の分断が生じたことも、急激な秋田県衰退の原因と考えています〉

 

知事だけでなく、家族ですら「東京のお前が帰省すると近所から白い目で見られ村八分にされるから帰ってくるな」なんて言う始末。

 

これは悪手だったと思います。結局全国で陽性者は激増したわけで、移動を自粛しても感染は広がったわけです。そんな時に「都会から来たヤツが悪い」と地方の人は他責思考かつ排他的になった。

 

そんなことを言われたら、観光客はもちろんのこと、本来地元愛があった出身者だって「じゃあ行かないよ」となるでしょう。出身者は、いい意味で他人が自分に無関心な都会の快適さに慣れている中、自分をバイキン扱いする地元に戻ろうとは思わないし、むしろ「もう私は東京に骨をうずめる」という決意が高まったかもしれません。

 

このデイリー新潮の記事を書いたライターの山内貴範さんは、秋田への強い思いを持ち、秋田関連の記事を多数書いています。故郷を思うからこそのこのインタビューではあるものの、コロナ期間中は悲壮感に溢れていました。

 

というのも、秋田に帰れなくなったからです。その代わり私が住む佐賀県唐津市に何度も来ました。きまじめな風土の東北とラテンのノリがある九州では、空気感は違いました。今は秋田に行けているようですが、人口減が続く自治体の町は高橋氏の発言を重く受け止め、今後感染症が流行したとしても「来ないで」とは言わない方が長い目で見ると自治体の衰退スピードを下げることに繋がります。排外主義はとにかく知事の皆さん・役所の皆さんはやめてください。

 

そういえば2021年の音楽フェス『ロック・イン・ジャパン・フェスティバル2021』(茨城県ひたちなか市)では、茨城県内の医師会の中止要請により開催中止に追い込まれました。「だったら出て行くわ」とばかりに2022年から千葉市での開催となり、2019年には

約34万人を動員するイベントを失いました。

 

2024年は同イベント15周年とひたちなか市制定20年を記念し、同市で行われましたが、今年は再び千葉に。今後は千葉でやるでしょう。「来るな」「開催するな」と言われて追い出されて尻尾を振って戻ってくるほど人間は甘くない、ということです。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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