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2026/07/20

フィッシングの、聖地論

中川淳一郎

釣りや虫取りにおいて「〇〇の聖地」といった呼ばれ方をされる場所があります。これは案外釣り人や虫取り名人からするとソソるキーワードなのですね。自治体広報としては、乱獲や地元の人を邪魔しないことに注意しながらこの点をアピールしてもいいのではないかと思いました。

 

そう思ったきっかけは、釣り関連の情報サイト「TSURI HACK」が2023年に発表した「釣り人の居住地として“最も理想的”な都道府県ランキング」があります。私は佐賀県在住なのですが、1位の長崎、2位の鹿児島に続き、3位にランクインしました。記事にはこう記述があります。

 

〈佐賀県は玄界灘と有明海に面し、唐津市の漁港や波止め、伊万里湾などは人気の釣りスポットとなっています。人気釣りYouTuber「釣りよかでしょう」さんの本拠地として知名度が高いことも、票が集まった要因のひとつかもしれません〉

 

ここに登場する「釣りよかでしょう」さんの影響で投票した人がいたわけです。釣りや虫取りについては専用雑誌やサイトがあり、多彩な情報をマニアは知っていますし、情報交換をしています。だからこそ、信頼できる「釣りよかでしょう」さんが活動する場所だから高評価をしてくれたわけです。

 

釣りに関していえば、北海道はイトウ、宮城はマゴチ、福島県は猪苗代湖のブラックバス、富山はイワナやヤマメの渓流釣り、岐阜は長良川や揖斐川のアユが「聖地」扱い。長崎の場合は五島列島や津島が日本屈指の良漁場とされており、多くの釣り人にとっては聖地です。

 

私が住む佐賀県についてはイカやアジを求めて各地から釣り人がやってきますが、宮城からやってきた知人男性は「アオリイカの聖地でついに釣れました。感無量です」と唐津市で釣ったアオリイカの写真を送ってきてくれました。

 

アニメや映画、マンガにドラマなどの「聖地巡礼」は各地にとって重要なコンテンツですが、釣りと虫取りも同様に聖地になり得ます。ただ、虫については、虫取り人が外部から人が来ることを嫌がる傾向があります。とはいっても、情報を聞きつけて外から来る人がいるので、それを拒否したり排除するのは無理があるでしょう。

 

この手の「聖地」で参考になるのは、いわゆる「ブランド魚」です。「北海道のボタンエビ」「大間のマグロ」「越前ガニ」「小柴のシャコ」「関アジ・関サバ」「富山のホタルイカ」「富山の白エビ」「金沢の香箱ガニ」「金沢のゴリ」「四万十川のウナギ」「呼子のイカ」などが名高い。

 

私自身、県外から来た人々と一緒に唐津でイカ釣りに行くことがあるのですが、この人達はイカが釣れると「おぉぉ! コレが呼子のイカですか!」と感動します。呼子のイカは確かにウマいものの、名物たる所以は、釣ってすぐに飲食店の生簀で生かしておき、注文が来たら都会では滅多に見られない透明かつ動くイカ刺しに人々が感動する、というのが大きい。だから、「呼子のイカ」というよりは「活け造りが素晴らしい」という話だと私自身理解していますが、別の場所から来た方は「呼子のイカを釣った」という事実で感動してくれる。これは嬉しいです。

 

実際、唐津の飲食店店主は「少し熟成させた方が味はウマい。ただ、活け造りのイカの見た目とコリコリした食感は滅多に食べられないから価値があるんやろね」と言います。名物・聖地になると、かくして人々の感動度合いが高まる。

 

各自治体の担当者の皆さまにおかれては、自分の自治体と「聖地」や「名物」「〇〇市といえば」などのキーワードをかけて日々ネット検索をし、地方創生のヒントを得てはいかがでしょうか。当事者が知らないことで部外者が盛り上がっている例を発見できたりするかもしれません。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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