2021/07/22
廃線トンネルを観光に活用~迫力の鉄道遺産“トンネル”を歩いてみた|第1回「旧北陸線トンネル群」(福井県敦賀市、南越前町)
ニッポンは世界有数のトンネル大国!
日本はトンネル大国である。道路で約11,000本、鉄道で約5,000本ものトンネルがあり、その他用水路など数えきれないほどのトンネルがある。
その歴史は古く、江戸時代初期(1670年)の箱根用水路が本格的なトンネルの始まりとされている。明治に入ると、日本の重要なインフラとして、急ピッチで各地に鉄道トンネルが掘られ、その後長くヒト・モノを運ぶ役割を担った。
温泉が多く、地質が複雑な日本のトンネル建設は、しばしば難工事を余儀なくされたが、その度に掘削技術の革新を重ね、昭和63年には当時世界第一位の長さの青函海底トンネルを開通させ、海外でも英仏ドーバー海峡トンネルなどで、その優れた技術を輸出している。
そんなトンネルの歴史を今も残し、現役の公道として、また近代化遺産の観光コンテンツとしても活用しているエリアがある。今回は、現在のJR北陸本線の旧線跡に残るトンネルのうち、私が歩いた2か所のエリアを、2回に分けて紹介する。
峠の最高点にある煉瓦の山中トンネル
明治の歴史を残す峠の鉄道トンネル群を今も公道で使用、日本遺産にも認定!「旧北陸線トンネル群」(福井県)
今回紹介する「旧北陸線トンネル群」(福井県敦賀市、南越前町)は、現在の北陸トンネルが開通する昭和37年まで国鉄の幹線トンネルとして使用され、廃線後も地域の公道として利用されている。長いトンネルが多いため、トンネル前に時間待ちの信号機が設けられているのも珍しい。
アクセスは、鉄道ならJR敦賀駅から。車なら北陸自動車道の敦賀または今庄ICからだが、“乗り鉄”の私は敦賀駅で電動チャリをレンタルして訪ねた(結構距離とアップダウンがあるので、タクシーも便利)。
現在は北陸トンネルを特急電車でわずか数分で通過するが、明治26~29年にこの地に12本(うち現在も11本が通行可)のトンネルが開通するまでは険しい峠の難所で、冬は名だたる豪雪地域。トンネルと鉄道が開通するまで、通行は難を極めた。そのトンネルの工事は複雑な地質との闘いで、最長の山中トンネル(1,170m)は工事に3年を要したという。また、長いトンネルの闇を歩いてみると、当時の煉瓦が残るトンネルの側壁には黒い煤がこびりついているのがわかる。蒸気機関車の煤だ。トンネルの先にはスイッチバックの跡も残っているが、物資を満載した長編成の貨物列車を牽引する蒸気機関車が、あまりの急勾配に動輪が空転することもあったという。機関士、そして“カマ”に石炭を秒速で入れなければならなかった機関助士の命がけの苦労の場でもあったのだ。
私の一推しは、曲谷(まがりだに)トンネルだ。内部で道が曲がっているため入口から出口が見えず、その“いい具合”な照明の効果もあって「どこかへ行ってしまうんじゃないか?」という異世界感が充満している。トンネルという建造物は有名なアニメ映画でも登場するが、異世界を結ぶ魔法のような役割も有している、と思うのは私だけだろうか。
これら明治のストーリーを往時の姿で残すトンネル群は、先ごろ日本遺産に認定された。また「食」も充実しており、冬場は越前ガニが有名だが、敦賀市内で通年味わえる新鮮な地魚や、「今庄そば」の素朴な味もおすすめ。今庄は旧北陸線トンネル群を列車が通っていた時代、峠へ挑む蒸気機関車の基地で、いわば“鉄道のまち”だった。かつては駅そばでも楽しめた「今庄そば」を、今も駅周辺などで味わうことができる。
葉原トンネルとトンネル前の信号
曲谷トンネル内部
【「TSURUGA NET MALL」より(敦賀の現地情報もあり)】
https://tsuruga-netmall.com/
【「今庄そば」~南越前町観光情報サイトより】
http://www.minamiechizen.com/tabid/72/Default.aspx
※画像は「日本遺産ポータルサイト」(構成文化財一覧)より一部引用。
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(受付時間 平日10:30~18:30、土曜日も受付~17:30)