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2021/10/18

廃線トンネルを観光に活用~迫力の鉄道遺産“トンネル”を歩いてみた|第2回「久比岐自転車道」(新潟県上越市、糸魚川市)

トンネルツーリズムプランナー 花田欣也

上越市廃線トンネル糸魚川市花田欣也観光

トンネルをこう楽しむ!

 
トンネル、というと暗い、怖い、というイメージを持つ人も多いだろうが、私なりのトンネルの楽しみ方を3つほどお伝えしたい。
 
①トンネルの“面構え”を見る。
トンネルの入口部分を「ポータル」と呼ぶが、明治、大正期の名トンネルには、煉瓦の
造形美が感じられる。トンネル上部の扁額(プレート)には時の総理大臣や知事が開通の喜びを込めた文字を揮毫(きごう)したり、煉瓦に装飾的な技法を施したり、設計士の心意気を感じさせるアートなトンネルが今も当時の姿で残っているのは魅力だ。
 
②トンネルの“闇”を楽しむ。
旧くて長いトンネルの闇の中にひとり身を置くと、なぜか落ち着く。都会では体験できない極上の“闇”が自分を包んでくれる。水雫の音に耳を澄ましてみると、日々の心を煩わせることが、汗ともに消えてしまうのだ。
 
③トンネル周辺の自然を楽しむ。
旧道のトンネルは峠の木々の中にポツンと存在したり、豊かな自然の中にある。ご時勢で今はなかなか体験できないが、マイナスイオンたっぷりの自然の中を歩き、素敵な景観を眺めながら歴史あるトンネルに出会うのは楽しい。
 


青木坂トンネルと日本海

 
 


青木坂トンネル

 
 

日本海の大海原を眺めながらサイクリングも! 久比岐自転車道(新潟県)

 
それらのトンネルの楽しみ方を兼ね備えたトンネル群が新潟県の久比岐くびき自転車道だ。第1回の旧北陸線トンネル群(福井県)に続き、同じ北陸本線の旧線跡だが、こちらはサイクリングロードとして整備されて、観光にも活用されている。
コースの大半が日本海沿いで、晴れた日にはマリンブルーの海からの心地よい風を浴びながら、100年以上の歴史あるトンネル群を体感できることが最大の魅力だ。 アクセスは、えちごトキめき鉄道が自転車道に沿っているので、糸魚川駅などでレンタサイクルを借りる方法がある(電動機付がおすすめ)。車なら国道8号線が並行しており、北陸自動車道の名立谷浜ICなどから、ポイントごとにレンタサイクルを利用するのもいい。なお、自転車道は約25kmと長く、レンタサイクルの乗り捨てサービスが現在まだできないので、事前にガイドマップを見て効率的なプランを組んでおくといいだろう。
この区間の鉄道が開通したのは大正元年だが、全国でも指折りの海沿いの崖地の続く難所で、しかも冬期は風雪に見舞われるので、開通後も列車の運行を守ることは大変だったという。トンネル以外にも「土留どどめ」と呼ばれる地すべり防止の擁壁や、トンネルに続くシェルター(落石覆い)が自転車道に残り、当時安全対策に苦心していたことを肌で感じさせる。
自転車道にトンネルは計8本あり、そのほとんどが当時の煉瓦のポータルを残していて見応えがあるが、あえて1本おすすめするとしたら、青木坂トンネルを挙げる。えちごトキめき鉄道の有間川駅から約2kmと歩ける距離で、トンネルの直江津側に日本海がバアーっと広がって、晴れると気持ちがいい。明るい海とは対照的に、明治44年に作られた煉瓦のいかつい面構えのトンネルが木々に覆われて現れるのだが、その中がまた“いい具合”にカーブしていて、私の好きな異世界感を味わえるトンネルだ。
そのすぐ先に乳母岳トンネルがあり、さらに海沿いを2kmほどで鳥ケ首トンネルに達する。このトンネルは一部がシェルターになっており、断崖絶壁で列車を守ってきた歴史を物語るが、シェルターのコンクリートの合間から、マリンブルーの日本海が見えて、SNS映えもしそう。
整備された道は歩きやすく、歴史を感じながら絶景を堪能できる絶好のエリアだ。
 


鳥ヶ首トンネルの巨大なシェルター

 
 


鳥ヶ首トンネルのシェルターから見える海

 
 
久比岐自転車道ガイドマップ
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/itoigawa_kikaku/1356906017223.html
 
 


 
 

 
10月14日(鉄道の日)に新著「鉄道廃線トンネルの世界 歩ける通れる110」(天夢人・刊、旅鉄BOOKS048)を発売。通行を許可された鉄道廃線のトンネルだけに絞ったガイド本は史上初、と話題を呼んでいる。全国書店、オンライン書店のAmazonなどで発売中。
https://amzn.to/3yHsp2T

花田欣也 トンネルツーリズムプランナー

総務省地域力創造アドバイザー
(一社)日本トンネル専門工事業協会アドバイザー

大手旅行会社に勤務するかたわら、30歳でJR全線を乗車し、その後私鉄もほぼ全線を乗車した鉄道ファン。ライフワークとして全国の旧道等に残る産業遺産“トンネル”を歩き、全国でも例のない現道のみの「トンネルツアー」の講師を各地で務めている。
「マツコの知らない世界」ほかテレビ、ラジオ、新聞等メディアにも数多く登場し、日本の貴重な土木産業遺産の魅力を発信。インフラツーリズムの新たなカタチとして地域活性化に繋げる講演も行っている。著書に「旅するトンネル」(本の研究社・刊)。
令和3年4月より総務省地域力創造アドバイザーに就任。

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