2021/09/10
昭和レトロと鹿児島のはなし
東京ディズニーランドが開園した年、そして任天堂がファミリーコンピュータを発売した年が1983年(昭和58年)。そんなメモリアルな年に僕は産まれました。生まれ育ったのは豆腐屋さんや氷屋さん、畳屋さんや駄菓子屋さんが並ぶ下町風情の残る小さな小さな商店街です。そのせいもあってか自分にとって落ち着く風景、好きな遊び、刺激的な場所、その全てが『昭和』のノスタルジーの中にあります。ミュージシャンとしてデビューして12年で2度47都道府県ツアーを周りました。ライブとは別の裏テーマとして楽しんだのは、全国の『昭和探し』でした。各地の未だ残る駄菓子屋を巡ったり、夜な夜な年季の入ったスナックを探し回っていました。
今回このコラムの話では、鹿児島にある僕のとっておきの“昭和”秘密基地を紹介します。
デビューした翌年、鹿児島を舞台にした映画『海の金魚』の主題歌として僕等の曲を起用していただいた事をきっかけに、初めて鹿児島に足を運びました。現役で走る路面電車や目の前にある立派な桜島、さっぱりラーメンが大好物の僕にドンピシャな『のり一』、鶏豚牛そして海鮮と、名物だらけでさらに出会う人も温かく心も胃袋も満たされる中、映画関係者の方から紹介していただいた一軒のBarに出逢いました。
鹿児島一の繁華街、天文館にあるBar『からから』。
通常20人くらい入れる空間に、昭和レトロなオモチャやポスター、ホロ看板などが3万点以上、壁だけではなく天井にも吊るされ飾られています…なので座れるのは10名くらいでしょうか。オーナーの石田さんが集めたもの以外にも、全国にいるこのお店のファンのレトロマニアが『このお店に飾って欲しい』と、自らのコレクションを譲って飾られているというのでその数は増え続けています。オーナー石田さんのレトロへの愛情が『商売』を超え、いつか座る席が更に減ってしまう日が来るかもしれません。是非早くこのお店に足を運んでいただきたいです。
博物館として小さな店内を見ていると、2時間3時間では見切れない程心躍るものが溢れています。ふと気づいて驚かされたのは店内の3万点以上のコレクションには全く埃が被っていないこと…毎日大切に掃除してたってこれだけあれば少しは埃が溜まってしまうものですが、細部にまで石田さんの愛情を感じます。実はこのお店には一つ秘密があって、常連さんでも中々入れない秘密の部屋があります。そこは石田さんのレトロ愛が凝縮された特別な空間なんです。“あなたのレトロ愛”が伝われば、もしかしたら入れてもらえるかもしれません。
今回は令和の時代に大切に遺されている鹿児島にある“昭和”をご紹介しました。エリアにはまだまだ良いものがありますね。