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2021/09/18

移住をするのであれば、その街で一番魅力的な時期に行け

中川淳一郎

中川淳一郎佐賀唐津移住

地方活性化や移住促進において大事なことは何かといえば、各地域が「四季の順位」を明確につけることだと提案します。私は2020年11月1日に東京から佐賀県唐津市に引っ越してきましたが、本稿を執筆中にようやく秋→冬→春→夏をすべて経験することができました。

 

佐賀(唐津)の順位としては、夏→春→冬→秋なのでは、と感じました。東京では春→秋→冬→夏でした。東京と佐賀のこの順番の理由は以下の通りです。もちろんコロナ騒動ではない年について、とお考え下さい。佐賀については唐津最大のイベント「唐津くんち」や佐賀市の「バルーンフェスタ」がある秋を経験していないことも大いに影響していることでしょう。

 


 
 

◆東京の四季、その順位

 

【春】桜がきれいだし、街中に新入生や新入社員が多く、雰囲気が前向き。GWも近づき気分が乗っていく。野球の開幕などイベントも盛りだくさん。ただし、花粉症の人にとってはキツい。


【秋】紅葉がそこそこきれいで、陽気としては年間で一番良い。サンマやマツタケなど秋の味覚の良いものは東京に集結し、飲食店が活況に。
 

【冬】そこまで極寒でもない上に、イルミネーション等で街が華やかになる。年末年始の都心のオフィス街の閑散とした雰囲気も悪くない。
 

【夏】とにかく暑過ぎる。自然は多摩地区の奥地に行かなくてはロクにないし、どこかに逃げようとしても大渋滞。近隣の海水浴場も大混雑で水は汚い。レジャーに行っても疲れるだけ。

 

 

◆佐賀(唐津)の四季、その順位

 

【夏】アウトドアのレジャーがとんでもなく充実している。カエルの鳴き声やセミの声、川を泳ぐ魚にカニなど常に自然を感じられる。人々があまりいないため暑苦しさも感じず、東京のジメジメした猛暑はあまりない。ドバッとスコールが降り、その後は涼しい空気になる。西の浜の花火大会と唐津城の合わさった風景は天下無双。ただし、台風には注意が必要。
 

 

 

【春】花が咲き乱れ始め、小魚が川面に見えるようになる。アウトドアレジャーも開始が可能になり、来たる夏への期待が高まる。
 

【冬】駅前や商店街のライトアップは中都市にしては充実。年末年始の凛と張った空気は、さすがに文化のある街、という感じも。正月料理も盛大に振る舞われる。夜になると派手な冬の星座がくっきりと見える。
 

 
【秋】本来は「唐津くんち」があるため、多くの唐津っ子にとっては1位かもしれないが、何しろ私はまだ経験していない。経験したら2位に浮上するかもしれない(やっぱり夏は素晴らしかった)。詳細は下記で説明する。

 
 


 

秋が最下位というのは、私の個人的な事情のみが影響しています。本来街は私が到着した11月1日の翌日・11月2日から4日にかけてユネスコの無形文化遺産「唐津くんち」が行われ、大盛り上がりとなるはずだったのですが、2020年はコロナにより中止となりました。到着後、くんちが行われないことを残念がる意見を多数聞きましたが、「年収の3分の1をくんちに使う家もある」とのこと。一体何に使うのかと言えば、この時期は自宅を開放し、人々に酒やごちそうをふるまうのです。
 
勝手に入っていいわけではなく、地元の人によると「関係性のある人と一緒ならば大丈夫。そしてその人は事前に酒やビールなどをその家に送っている。少なくとも私はそうしている」そうです。
 
というわけで2020年11月1日、なんだか気が抜けたような、諦めムードの東唐津駅に降り立った瞬間、「ヤバい場所に来てしまった……」と思いました。まったく縁もない土地に降り立ち、ここで長期間住むことを決めたわけで、「東京に帰るなら今だ。でも、オレは退路を断ってこちらに来た」と腹を括ったものの、『三國志』の「秋風五丈原」的寂寥感がありました。
 
この日の夜は佐賀への引っ越しを提案してくれたライターのヨッピー氏と会ったため、少しは不安も除去されました。その翌日から2日間連続で佐賀の各所を周り、佐賀のPR記事の取材をします。
 
この3日間については気が紛れたものの、この「祭」が終わってから唐津市の移住サポートNPO「まつろ」の用意してくれた「お試し移住」の一軒家で妻と2人でいると不安がどんどん増幅していきました。

 

 

何しろあれだけ人口が多くてザワザワしており、しかも知り合いが数百人レベルでいた東京を離れたのですから。唐津ではほぼ誰も知らないし、一軒家の近くは畑しかない。少し歩くとディスカウントストアやスーパーはあるものの、基本的にこうした場所では人と人の交流なんてあり得ない。
 
夕焼けのこの場所ではまさに「侘しさ」を感じることが多かったのと、本当にここでやっていけるのか? ということが心配になってきたのです。その後、佐賀県内で知り合いは増え、福岡・東京・名古屋の知り合いが唐津を訪れるようになり、少しずつ気分は安定してきました。
 
春になると上記のように花が咲き始め、気分も上昇し、唐津生活が楽しくなってきました。そして、ますます知人も増え、人々も唐津にやってくる。ここで夏を迎え、ようやく「唐津に引っ越して良かった」と心から思えるようになりました。佐賀の真価は夏にあると思います。
 
このことから分かるのは、意外と「移住をするのであれば、その街で一番魅力的な時期に行け」ということが大切だということです。私は自分にとっては4位の「秋」に来てしまったから最初のしばらくは不安が多かった。もしも夏にいきなり来ていたら不安感がなく、新拠点での生活を満喫できたかもしれません。

 

 

そうした意味で、地方活性化や移住促進をしたい各自治体は、春夏秋冬、どのシーズンが最高で、その時期に初めて足を踏み入れるとその街にホレるか、ということは明確にした方がいいと思います。そこは、「カキの養殖業者に悪いから『夏』とは言えないよな……」とかそういった忖度は不要で、本当に自信のある季節をバシッとランク付けした方が、結果的に活性化することでしょう。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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