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2021/11/15

地方創生に肝要なのは「バランス感」!

中川淳一郎

中川淳一郎佐賀唐津

地方活性化については、いかに「古いもの」と「便利なもの」を両方用意するかが大事だと考えています。商店街の消滅や、無個性化の象徴として批判されがちなAEONのようなショッピングモールですが、地域の人々の生活の利便性や娯楽としては私は必要だと思います。

 

しかし、「古いもの」を捨てると途端に街が魅力を失います。私は小田急線の代々木八幡に事務所を構えていた関係で、時々小田急線に乗っていたのですが、見事なまでに各駅が画一化されていました。かつて個性があった下北沢もそうですし、完全に町田あたりまで同じような駅とその駅前の風景が続くのです。

 

目的地以外の場所に行きたいと思わないような都市開発としか思えませんでした。たとえば、JR中央線であれば、中野・高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪・西荻窪・吉祥寺と連続する6つの駅いずれでも降りてみたい気持ちになるのですが、小田急では降りたい、と思う気持ちにほぼなりませんでした。

 

下北沢も駅前のあの薄汚い感じと昭和のヤミ市みたいな商店街が良かったのに、すっかりきれいになってしまった。その点、渋谷の井の頭線改札口近くの「オッサン飲み屋街」みたいなところはまったく変わらず、完全に下北沢に行くことはなくなり、毎度飲む時は渋谷に変わってしまいました。あとは、新宿三丁目や神保町ですね。

 

先日、「唐津くんち」を初めて見ました。私は2020年11月1日に唐津に引っ越してきたのですが、昨年はコロナで完全に中止。今年は本来の11月2日~4日開催のところ、3日の神事のみの縮小開催となりました。

 

 

 

 

 

これが良かったんですよ……。築100年は経とうかという古民家の2階の窓から「曳山」を見たのですが、すさまじい迫力でしたし、唐津という街の「一体感」「底力」を見ました。曳山が通った後は皆で酒を飲み、楽しい時間を過ごしました。

 

現在、「曳山展示場」はJR唐津駅近くの「ふるさと会館アルピノ」にありますが、ここに曳山が帰ってきました。その様子を見ようと、唐津の屋台街では、外に椅子を出している人々がたくさんいて、歓声をあげていました。

 

唐津の中町商店街、呉服町商店街など歴史ある商店街は、大正時代等の建物をそのまま残しています。どこかの店が営業を終了しても、その雰囲気に合う形でハンバーガー屋ができたりする。とにかく「古いもの」も維持しつつ少しずつ変化をしていくという方針を見て取れます。

 

これがいいんですよ。だから、唐津に来る人々はこの街にホレて帰っていく。小田急線沿いであっても、私が過ごした代々木八幡や参宮橋はあまり変わりません。それは実にホッとする光景ですし、街の魅力を維持してくれています。

 

地方の県庁所在地ないしはその県のNo.2の都市に行くと、同じような風景ばかり見ることになります。もちろん、チェーン店やショッピングモールは誘致してもいいでしょう。しかし、元々あった街の財産を失うようなことまではするべきではないと私は考えています。

 

現在私が住んでいる佐賀県唐津市については、その調和が取れているように日々感じています。この1年、観光客はあまりいなかったのですが、さすがに10月を過ぎると観光用の地図を持った市外からの観光客を見るようになった。元々欧米や中国・韓国・台湾の観光客も多かったと聞きますが、取り敢えず国内の観光客は戻ってきた兆候は見られます。

 

 

 

 

そんな彼らは、歴史と自然と新しいもののバランスが取れた唐津という街に何らかの魅力を感じ、来てくれているのでしょう。街の人も、このバランスを誇りに思って日々生活しているのだなぁ、と今回初の「唐津くんち」を経験した結果思いました。

 

 

 

 

とにかく大資本のチェーン店をバンバン作れば街が活性化する、というのはあり得ないと思います。何事もバランスが大事です

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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