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2023/06/15

「一点突破」のブランディング。

中川淳一郎

富山県が「寿司といえば、富山」というブランドイメージを10年後に確立するため、寿司で一点突破する方針を発表しました。海外の人も当然ターゲットとなり、「Land of SUSHI,TOYAMA」を目指すようです。

 

一つに絞るのは賢いやり方かもしれませんね。富山は富山市だけでなく氷見や立山連峰もあるなど見事な観光地は多数ありますが、「もう、寿司で行く!」と決めたのでしょう。以前富山駅に行ったら富山湾のことを「天然の生け簀」といった表現をしていて、魚をアピールしていましたが、それが進化しています。

 

この一点突破ですが、先輩として存在するのが「うどん県・香川」ですね。過去に湯布院や別府温泉を擁する大分県が「おんせん県」を商標登録申請したところ、草津温泉を擁する群馬県が「待った」をかけ、独占化をしないよう求めました。大分県としては、この言葉を使って使用料を取るような第三者が現れて使用を独占したり、料金を取ることを避けるための申請だと説明。そのため、他の県が使うことを否定するものではないようです。ただし、「総湧出量と源泉量日本一のおんせん県」であることは今でもアピールしています。

 

この「一点突破」、これから増えたら面白いことになりますよね。もう札幌・東京・横浜・箱根・熱海・京都・大阪・神戸・奈良・広島・福岡・沖縄であれば一点突破しないでもいいですが、富山のこの戦略の動向を見ながら各自治体は参考にしてもいいのでは。

 

その場合、県単位なのか、市町村単位なのかという問題はあるでしょうが、とりあえず上記のように「市」で盤石のポジションを築いているところもあるので、県とは連携しつつも市町村独自で一点突破をしてもいいかもしれません。当然「駅」単位でも明確なポジショニングを作り上げた場所は多いです。東京に多いですが、「下北沢=芝居・サブカル・若者」、「原宿=若者・最先端ファッション」、「銀座=日本一の繁華街」、「新宿=カオスで多国籍で少し怪しさもある」、「福岡・中洲=屋台」といったところが人々を惹きつけています。

 

私は東京の中野という街が好きなのですが、ここは「サブカル」「飲み屋」「昔ながらの名店」「中野サンプラザを含めた音楽」といったものがあります。2000年代前半、会社員時代の先輩とこの街のキャバクラへ時々行っていたのですが、心地よいんですよ。商売っ気がないというか、「昼は寿司屋で寿司握ってます!」みたいなことを言う「雨上がり決死隊」の宮迫博之さん似(自分からそう言いました)のキャバクラ嬢とよく店で飲んだのですが、「新宿は怖い。少し手前の中野だと怖くないし、庶民派な感じがして私はここまでしか来られません」と言っていました。

 

そうなんですよ。中野って大都会・新宿から近いのに、ガツガツしていなくて穏やかな気持ちになれる場所なんですよね。となると、東京都下・立川市出身の私としては中野は「立川にも近い感覚で都会に近過ぎる地元」的な雰囲気を感じてしまいます。

 

さて、「一点突破」できる県・市町村はあるか。しかし、これが難しいんですよね。「精進料理」や「高い山」「城下町」なんて言われても魅力度は少ないし、「他にもあるだろ」なんて思う。その点、富山が「寿司」に絞ったのはナイスな判断だと思います。

 

そういえば、ラーメンってすごいですよね。「札幌」「旭川」「喜多方」「和歌山」「徳島」「博多」「沖縄そば」など色々ありますもんね。「一点突破戦略」、これから皆さんも考えてみてはいかがでしょうか。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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