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2023/06/23

鄙(ひな)の名店

中川淳一郎

「高いけどウマい店」というのは地方にとって大事だな、と思います。それこそミシュランの星店も含めて。タイヤを早くすり減らすためにフランスのタイヤメーカー・ミシュランがこのガイドブックを作ったわけですが、私自身はあまり好きではありません。権威と化してしまいますからね。

 

とはいっても、ミシュラン掲載店は貴重な役割も果たしている。なぜ高いけどウマい店が大事かといえば、わざわざその店を目指して全国の食道楽者がやってくるからなんですよ。とある高い店を検索していたところ、「好きなことをやって生きたい」みたいなタイトルのブログに辿り着きました。その人のブログはとにかく有名店で食事をしたことばかり掲載されています。私のように安い店が好きな人間でも名前ぐらいは知っている全国の店を巡っているのです。

 

まさに「美食のために三千里」といった感覚の人なのですが、私自身の知人にもこの手の人は何人もいます。飲み物も含め3~5万円のコースを平気で食べてしまう。食べ終わった感想は「やっぱすごい店だった」みたいなものになっています。

 

恐らくこうした種類の人々は同好の士とも食巡りをしていることでしょう。となれば、何人もの人々がその街を訪れることとなる。しかも、こうした食道楽者はブログやSNSで食べたものを報告するのが常。当然、その他の観光スポットの紹介等もしてくれるわけで、こんな上客はいないです。そして彼らを連れてきてくれる存在が「高いけどウマい店」なのです。

 

銀座や六本木はさておき、地方都市では、高いけどウマい店は微妙な扱いを受けることもあります。「あそこは私達が行くような店じゃないからね……」「メディアが取り上げて天狗になってる面があるよね……」みたいなことを陰で言われてしまうのです。

 

しかし、その店があるお陰で人がやってくるということを考えれば、地方活性化においてこの手の店はすごく重要なのではないでしょうか。しかも、その店に来た人が感動したらリピートし、今度は別の客を連れてきてくれる。この好循環が生まれるのです。

 

海外の富裕層もその店を目指すでしょうから、陰口を叩くよりも、その人々にいかに土産等でお金を使ってもらうかを考える方がよっぽど建設的です。

 

また、「高いけどウマい店」の人は、食道楽ブログを読み、もしもあなたの店にその人が来ていなかったらコメント欄で「お近くにいらっしゃる際はぜひ当店へお越しください」などと丁寧に書いても良いかもしれません。ブログ記事をある程度読むと、その人の舌や好みが分かりますので、自身の店がその人に合うと感じたらこのようなメッセージを残すのも失礼なことではないと思います。

 

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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