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2023/07/14

観光以上・帰省未満

中川淳一郎

昨今、京都のオーバーツーリズムが次々と記事化されています。渋滞・満員電車・人が多過ぎて風情のない寺・舞妓さんへの嫌がらせなどが話題になります。かつて京都へはよく行っていたのですが、さすがに今の状態だと行くのは難しいかな、と思っています。

 

しかし、はたと考えてみると、すでに主要仏閣は巡っているわけだし、会いたい人がいるわけでもない混雑した場所へ行く必要はない。あと、観光ガイドに出てくる京都の仏閣はその風景だけが見えていて魅力的ですが、実際に行ってみると「人を見ている」感覚になる。寺を見るなら写真に限る。あと、「そもそもオレ、寺って好きだったっけ?」という根源的な問題にぶつかってしまう。唯一無二という町屋を含めた風景と空気感と食の充実っぷりは好きなのですが、もう神社仏閣は行かなくてもいいかな……。

 

現在私は佐賀県唐津市にいますが、先日I氏から来たメールにはこうありました。

 

〈中川さんや山崎さんに会いたくて、児玉さんと唐津行きの相談をしているところです〉

 

山崎さんというのは、唐津のみかん農家の男性で、児玉さんというのは、宝塚市の医師・児玉慎一郎氏のこと。児玉さんは唐津に3回、I氏は2回来ています。地方振興は結局「人」か「食」「店主」といったあたりが最大の観光資源であることは以前書きましたが、オーバーツーリズムの記事とI氏のメールを読んでからこの考えがやっぱり正しいのでは、という考えが強固になりました。

 

アニメの「聖地巡礼」にしても、舞台となった「聖地」の店や店主との再会、同好の士との再会などが楽しみにされている。これが何かといえば言語化すれば「観光以上・帰省未満」といったことになるのでは。

 

御朱印コレクターや、47都道府県、といった目的がある人は別ですが、「観光以上・帰省未満」の考え方を各自治体や商店街はPRに活用した方がいいかもしれません。先日会った芸能人・Aさんが言っていたのですが、その人の出演は月~金の22時台後半。局入りが遅いため、それまでにできる日帰り旅行をしてしまうそうです。

 

そこで驚いたのが、なんと竹芝桟橋から船で小笠原島まで行き、海をボーっと見て馴染みの寿司屋へ行って船で戻り、そこから局入りするという。「また来たね」と言われるほどなわけで、Aさんにとっては「観光以上・帰省未満」がこれにあたります。小笠原の海という光景と寿司屋と同店従業員がAさんにとっては心地よい。

 

こうした話は小笠原の観光協会や移住関連部署がキャッチをし、Aさんの取材をしてHPやSNSで公開してもいいのでは。商工会や観光課の会合で「そのような『観光以上・帰省未満』みたいなお客さんっていますか?」と聞くと案外該当する人は出てくるのではないかと思います。

 

唐津の場合ですと、前出の児玉慎一郎医師はそれに該当するような存在だと私は勝手に思っています。初めて来たのは2022年5月。ツイッターで「唐津へ行く」という連絡があり、本当に翌朝の9時半頃唐津へやってきてそこから海へ行き、すでに空いているラーメン屋で餃子とビール。その後は12時から開いている飲み屋へ行き、15時頃宝塚に帰っていきました。

 

続いては7月31日で海で行ったイベントにも来てくれ、11月にも来ると宣言。児玉さんと会いたい唐津・福岡の人間が大集合する宴会が開催され、児玉さんも地元の人間も善き時間を過ごしたのです。といった感じで各地の観光・移住関連の業務に携わる人は「観光以上・帰省未満」の人にぜひとも魅力を聞いた方がいいでしょう。

 

 

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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