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2023/11/27

姉妹都市不要論

中川淳一郎

「姉妹都市」ってどんだけ意味あると考えたことありますか? 私はこれまで50年間の人生で一度だけそのことを真面目に考えたことがあります。それ以外は一切ありません。で、今回の原稿については「姉妹都市」は役割を終えつつあるのではないか? という提言です。

 

1987年から1992年まで米イリノイ州のブルーミントン市という街に住みましたが、この街の姉妹都市は北海道旭川市。人口は旭川が現在約34万人で、当時のブルーミントンは約3万人でした。街の規模は全然違うのに、ただ単に緯度が両方とも約43度という点で一致。高校で1人ずつ交換留学生がいました。

 

結局、これまで50年の人生で「姉妹都市」を感じたのは、旭川から来た女子生徒(日本人)と、旭川から帰ってきた男子生徒(アメリカ人)だけ。当然同じ学校にいるので喋ることはあったものの、その程度の付き合い。さらに、「交換留学生」がいない立場の大学生になると一切姉妹都市関連の接点はない。私の地元である東京都立川市の姉妹都市も知らないし、現在拠点を持っている佐賀県唐津市の姉妹都市も知らない(敢えて検索していません)。

 

地方新聞を見ていると、姉妹都市同士の交流が登場することはあるものの、正直、役所と関係性の深い人々だけが交流するだけで、一般市民にとっては何も関連性もメリットも感じられないのです。

 

さらには、国と国の関係が悪くなったら「今年の交流イベントは両国の関係悪化を考慮し、中止となった」といった報道が出る。しょせん、「姉妹都市」なんてものは、もっと大きな力が働く場合は交流を避けるようになる程度の関係なんですよ。

 

語源は「sister city」ではありますが、なぜ「姉妹」なんかが分からない。昨今のジェンダー関連の話題が問題になる中、「兄弟都市」ではダメなのか? 「親戚都市」ではダメなのか? アメリカでは「Twin City」という言葉があります。たとえばミネソタ州のミネアポリスとセント・ポールです。これがMLBの「Minnesota Twins」の語源になっています。

 

しかし、「兄弟」といえばまたまたジェンダー問題が出るし、「親戚」でも「親戚がいない人もいる!」という批判が来る。となれば「友好都市」「関係都市」「交流推進都市」といった呼び方しかなくなるわけで、「姉妹都市」は使い勝手が悪い言葉にもはやなっていると私は感じます。

 

私がいた「ブルーミントン」にしても隣接する「ノーマル」という市と「Twin City」関係にありましたので、隣り合っている自治体同士の交流は分かります。このように、国内では姉妹都市的なものは意味はあるものの、これが国際的になると本当に意味があるのか? ということを思ってしまうんですよ。

 

ロシアvsウクライナ、イスラエルvsハマスなど世界では紛争が発生します。当然今後は「中国vs台湾」なども発生するわけで、姉妹都市としての提携をしてしまうと両方から恨まれる結果になる可能性もある。

 

そういった意味で「姉妹都市」というものはもはや役割を終えたのではないでしょうか。個々の市民が行きたい場所に行けばいいワケですし、自治体もかつて姉妹都市としての関係があった市の観光情報を提供するだけでいいと思います。

 

それが2023年、世界中で紛争がある中で自身の自治体を政治的紛争に巻き込まない賢い選択でしょう。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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