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2024/03/27

ガストロノミー

中川淳一郎

2週間に1回、最近の社会の「風」を報告し合う大手広告会社の会議に参加しているのですが、この日話題になったのは「ガストロノミーツーリズム」。「食」を文化の観点から捉えることを「ガストロノミー」といい、食材や食を通じてその土地の魅力を知ることを意味します。静岡県は公式HPでガストロノミーツーリズムを推奨しており、そこには具体的にやることを以下のように挙げています。

https://www.pref.shizuoka.jp/kensei/pr/johoshi/kenmin/1040307/1044710/1046525.html

 

「地域の旬の食材や料理を味わう 地域ならではの食文化や食の背景を知る 生産者や料理人と交流する 地域の地理・歴史・文化を感じる」

 

醸造所や蒸留所もあり、その元となっているのが富士山の湧き水。富士宮市では富士山の伏流水を汲めるスポットが10数か所あるようで、その中でも美しい湧水がたたえられた富士山本宮浅間大社の「湧玉池」が紹介されています。そのうえで、ガイアフロー静岡蒸溜所とクラフトビールの「ベアードビール」を紹介。

 

これが「ガストロノミーツーリズム」のあり方の一つですが、「食」を求めてわざわざその土地を訪れる人って確かにいるな、と思いました。私のこの14年来の友人であるコピーライターのこやま淳子さんはその一人。

 

とにかく寿司が大好きで、日本各地の寿司の名店を訪れています。気に入ったらリピートして上客になるわけで、交通費・宿泊費と寿司代を合わせたら平気で10万円はかかりますが、寿司のためならなんのその。観光もしてその土地にたっぷりお金を落としていくわけです。たまたま知り合いが移住した宮崎に彼女も誘ったら行きたい寿司屋があるとのことで、その高級店を予約してもらいました。日本酒と合わせるこの寿司屋、絶品でした。

 

今や外国人観光客や日本国内の富裕層が豊洲やニセコで海鮮丼に10000円ぐらいのカネを落とす時代です。美食にカネをかけることを厭わない層にガストロノミーツーリズムを提案する、という戦略も取るべきではないでしょうか。

 

もちろん、庶民も相手にすべきですが、こうした富裕層はSNSでの拡散力を持つ人も多いし、二重基準で各自治体は「食」を通じたPR活動を展開すべき状況にあると思います。

 

私の地元・唐津にしても、その飲食店をめがけて多くの人がやってくることは多いです。ここでは紹介しないものの、春~夏限定の離島のレストランなんて、予約が殺到していて半年前ぐらいからしか予約が取れないほど。

 

ガストロノミーツーリズムについては確かに理解ができます。なにしろ、「食事がウマい」という国は多数の観光客が訪れる。何しろ一日2回~3回は食事をするわけで、旅の醍醐味の多くを占めるのは食事です。だったらどんな立派な寺やら展望台があるよりもおいしい食がある都市を選ぶのは普通のこと。

 

いくら有名な観光施設であろうと一度行けば大体十分ですが、食事だったら何度リピートしても構わない。東京在住者の中には東京タワーや東京スカイツリーに上ったことがない人もいるでしょうが、わざわざその近くまで何度も遠征してまで食べたい店はあるかもしれない。

 

それに、地元に誰かが入れ代わり立ち代わり来たとしても毎度観光施設に案内するのは、迎える側からすると苦痛なもの。その施設は来訪者だけで観光してもらい、その後の食事で地元のお気に入りの店を楽しむという方が受け入れ側としても楽です。これならば翌週に別のグループが来ても同じことをできる。店としても新規顧客が来るのはありがたいこと。次回はその人が自ら予約することになるかもしれません。ガストロノミーツーリズム、地方創生において一つのキーワードになるかもしれませんね。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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