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2023/10/12

英語メニューについて考えてみる

中川淳一郎

日本の地方都市に行くと仰天するほど英語が通じないと感じます。いや、都会でも常連を相手にしているような店では同じです。写真があれば少しは理解できるでしょうが、英語メニューがとにかく少ない! 今年の2月~5月、タイとラオスにいたのですが、かの両国でも英語メニューはかなりの割合で存在しました。別メニューがある場合とタイ語の下に英訳が書いてある両パターンでした。フードコートでも併記されていました。

 

タイ語しかメニューが書かれていないような場所は屋台が多かったですが、それでも指をさして食材を示せばなんとかなる。ラーメン屋であれば「40バーツと50バーツの差があるが、恐らくこれは『普通盛り』と『大盛り』の差であろう」ということがなんとなく見当がつき、その通りだったりします。

 

しかし、日本の店はメニューに筆ペンで達筆な日本語が書かれていて日本人にとっては食欲をそそるのですが、どう頑張っても外国人には読めないでしょう。それがためにその店から外国人が退店する例が出るのは機会損失です。別にネットの自動翻訳でも構わないので、英語メニューは別で作った方がいいのは間違いない。

 

こうなると焼き鳥屋はかなり苦労するでしょう。日本人相手であれば「肉巻きアスパラ」と書いておけば、「薄い豚バラで切ったアスパラを巻いて串焼きしたもの」と分かる。しかし、外国人はそもそも何の肉かもわからないし、その肉が厚いのか薄いのかもわからないし、味付けも分からない。だからこそ写真があったうえで、「Pork belly wrapped asparagus with salt and pepper」のように書いた方がより親切です。脂肪分の多いバラ肉が苦手な人も多いため、部位も示す必要があります。

 

ここでさらに大変になってくるのが、提供する食材が毎日変わるであろうカウンターの寿司店です。メニューが「おまかせ」の場合が多いですが、その寿司ダネの名前を英語で把握しておかなくてはならない。さらにはつまみの場合、「稚鮎の唐揚げ」だの「サザエの塩辛」などとこれまた複雑。その場で自ら英語で解説しなくてはなりません。

 

今後、「ネット情報とインバウンド」についても書きますが、海外観光客が多く使う口コミサイトtripadvisorでは英語が通じるかどうか、英語メニューがあるかも重要な評価基準になっております。

 

その地域の中でも勝ちたい、と考える店舗経営者は、とにかく英語を覚えてください。味については他の店に負けていても、外国人観光客から見た利便性で圧勝すれば、総合的な評価として上位に立てる可能性があります。

 

ちなみに過去、自動翻訳の制度が悪かった頃、神奈川県内の某食堂がうどんのトッピングの「きつね」を「Fox」と訳し、トンカツを玉子でとじた「カツ重」を「Katsu weight」と券売機に表記し、ネットで話題になっていました。あとは道路標識もどうにかした方がいいと思います。「交番 KOBAN」などとありますが、「交番 Police box(Police station)」でなくては分かりません。

 

 

兵庫県伊丹市のローカルメディア「ITAMI ECHO」に「市内にある交差点名標識の英字表記が変わったみたいなので調べてみた」という記事があるのですが(2019年11月6日掲載)、これが滅法面白い。「伊丹郵便局前」の英語表記はかつては「Itamiyuubinkyoku mae」でしたが、これが「Itami Post Office」に。「伊丹アイフォニックホール前」はかつては「Aifonikku Hall mae」でしたが、「Itami Aiphonic Hall」に変更。さすがに「Aifonikku」は元々英語的読み方にしていてもよかったでしょうよ。「千僧公団前」は「Senzokodanmae」でしたが、「Senzo Apartment Complex」いずれも外国人には分かりやすくなっている。「mae」とか書かれても当然分かるわけないので、伊丹市のこの取り組みは素晴らしいと思います。そしてこれを調査した記者も。

https://itamiecho.net/topic/post-2595/

 

今、日本は衰退途上国になっていますが、かつて発展途上国で外貨をいかに獲得するかに努力した20年前の東南アジアを今の日本の各地は見習うべきではないでしょうか。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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