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2023/11/09

害獣について考える

中川淳一郎

最近話題になっているのが秋田県をはじめ、東北や新潟などでクマが人間の生活エリアに出没すること。エサのブナの実が少ないため、行動範囲を広げているようです。秋田県美郷町でクマ3頭を駆除したところ、同町に全国各地から約600件のクレームが寄せられました。基本線としては「かわいそうだろ!」といった動物愛護の観点に立ったもの。いやいや、クマって愛玩動物ではなく、狂暴な野生動物ですが……。

 

さて、今回書きたいのは、「地方の発展のためには害獣駆除は必須。そしてソレをおいしく食べる」です。クマなんて人間を襲うとんでもない害獣ですが、どうも都会の人は害獣が身近におらずピンと来ないから、「クマ駆除」でクレームを入れる。害獣と接するにしても、時々ある「新宿にサル出没、捕獲作戦実施」のようなB級ニュースとして娯楽のように消費されます。

 

しかし、地方では害獣はその地域が潰れるかどうかの命運を握っているので、どうか害獣駆除のニュースで駆除した自治体や猟友会、ハンター個人にクレームをつけないでほしいです。切迫度合が違うのです。本当にイノシシ・シカ・サルは大切に育てた農作物を根こそぎ取っていってしまう憎たらしいヤツなのです。佐賀県伊万里市の農家・吉田金吾さんは10月18日、フェイスブックにこう投稿しました。

 

〈昨日と今日でイノシシが5頭箱罠で捕獲されました

イノシシの農作物への被害は甚大たで駆除しないと大変なことになります

駆除する猟友会の方も高齢化でここ数年で限界です

駆除は止もう得ない措置です

まだこの地区には4頭の親子 3頭の親子 2頭の親子

数頭の単独が目撃されています

現状を知らないひとには信じ難い現実です

この現実を知っていただくため敢えて投稿しました〉

 

ここで「親子」とあるのを見て「かわいいウリボウまで駆除したのか!」と怒りたくなる人もいるでしょうが、当事者からすればウリボウだって害獣だし、すぐに大きくなるから憎たらしいヤツになる。

 

私は金吾さんから冷凍のイノシシ肉をもらったり、彼の山小屋でイノシシ捌きに参加したこともあります。地元猟友会が仕掛けたワナにかかったイノシシを殺し、内臓を出し、上手に血抜きをしたものをチェーンにぶら下げ、皮をガスバーナーで焼いてノミを殺してから皮を全部剥ぎ、解体していくのです。金吾さんを含めた地元の人々は、殺すからにはせめておいしく食べてやらねば、と考えて我々をこの場に呼んでくれるのです。

 

先日は40kgほどの大きくはないイノシシを一頭解体し、肉は小分けして私の地元の友人や飲食店に配りました。内臓処理と血抜きが見事なため、まったく臭くない。続々と「おいしかったよー!」の声が寄せられました。作ったのが各者各様で、「塩胡椒でグリル」「イノシシ汁(要はトン汁のイノシシ版)」「カレー」「バーソー」など。バーソーとは『檀流クッキング』に登場する人気料理で、中華風肉味噌です。私はカレーにしました。ブロック状にしたイノシシ肉は、牛的要素が少し入った豚肉といった趣があります。

 


そして今、骨折のため唐津の病院に入院しているのですが、同室の高齢男性猟銃の免許更新のため警察に行かなくてはいけないという話をしています。さらに、ジビエの中ではアナグマがウマい、と語ったりするなど害獣は身近で厄介な存在なのです。地方都市の人は、こうした実態をキチンと説明する必要があります。都会の「殺すなんてかわいそうだ!」的感情論は所詮はきれいごとであることを説明しないと、一次産業が主力産業の自治体は崩壊してしまいます。

 

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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