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2021/12/25

「都会と地方…両方の長短を知っている人」がカギ

中川淳一郎

中川淳一郎唐津

私が東京・渋谷から佐賀・唐津に引っ越してから約1年2ヶ月。「都会育ちのオレが地方でやっていけるのか……」と当初は思ったのですが、まさかのアッという間の1年2ヶ月経過。しかも、毎日快適ですし、正直もう東京・大阪・名古屋・福岡といった人の密集した場所に住みたいとは思いません。

 

何しろ、都会で見知らぬ他人と出会う機会が多ければ多いほど「肩がぶつかった」「ガンをつけやがった」だのどうでもいい理由で口論が発生し、挙句の果てには暴力沙汰にもなってしまう。しかも今の時代、密集した都会はコロナ騒動のせいで、とにかくギスギスしています。私は月に1回東京に番組出演のため、「出稼ぎ」に行きますが、さっさと唐津に帰りたくて仕方がありません(もちろん、東京で再会する方々との時間は最高です)。ただ、人が多い場所はこの「ギスギス感」ってヤツが避けられないんですよ。

 

もちろん、48歳の私のように、編集者・ライターとして「やり切った」という人間だからこそ東京から出て、そのうえでリモートで東京の会社と仕事をすることができるのですが、やっぱりあの密集度合ってものは一度地方都市の閑散さを経験するともはや耐えられなくなくなります。

さて、今は48年の人生において、アメリカの片田舎に住んだ4年9カ月を除き初の非都会生活です。唐津に来る前、散々「地方の人は排他的だよ」「地方の人は都会モノを警戒するよ」と言われてきたのでビビっていた面はもちろんあります。

 

そして、実際に唐津で床屋に行ったところ、東京出身者であることがバレ、コロナ陽性者だと思われ拒否された経験はあるのですが、それ以外に「都会出身者」としての差別を受けたことがありません。

 

私のような都会育ちが地方都市にいても快適な理由を考えてみたのですが、唐津を中心とした佐賀・福岡・熊本の人々と知り合って分かったのが、結局「都会の良さを知ってる人がどれだけいるか」なんですよね。

 

東京育ちの私が唐津に来たということで、「会いましょう!」「新しい風をぜひ、地元にもたらしてください!」と多くの人が会ってくれました。それは、県庁所在地・佐賀県の県庁の方や佐賀新聞の方はもとより、唐津の駄菓子屋の店主や寿司店の店主やミカン農家の方、さらには太良町のアスパラ農家の方など様々です。そして、移住者も同じようなことを言ってくれます。

 

多くの「このままでは地元は活性化しない」という危機感を持っている人々が、「色々な人が活躍しなくてはジリ貧になる」ということをよく理解している。そして、彼らは実は学生時代や修行時代に東京・横浜・埼玉・愛知・大阪・広島・福岡等の大都市を経験しています。一方で彼らから言われるのが「佐賀とか唐津の人って閉鎖的でしょ?」という一言です。

 

いや、そんなことはありません。それは「知らない人に対しては閉鎖的」というだけで、東京都渋谷区だろうが、新宿区だろうが、突然来たアウトカマーに警戒するのは当たり前です。

 

彼らは結果的に都会へ一旦行ったものの、地方に戻るという選択肢をしたわけですが、この人達の「ハイブリッド」ともいえる考え方が今の自分には実に心地よいです。彼らは都会と地方、両方の長短を知っているものの、地方の方が自分のQOL(生活の質)においてはいい、と考え今の生活を築いています。そして、「一応、私は地元の人間だけど、完全アウェーの中川さんには配慮の一言を言わなくちゃ」と、「閉鎖的でしょ?」の一言をいってくれる。

 

 

 

 

地方活性化において重要なのはこうした「都会と地方両方知っている人」の存在です。こうした人々を核とし、彼らが持つ都会とのネットワークを組み合わせることこそ重要です。実際、私と積極的に会ってくれる唐津・佐賀の皆さんはこういった方が圧倒的に多い。あとは「オレは唐津から出たことはないけど、外からの“風”が必要なんですよ」などと言う人々。この人達も、地方の限界をよく知っているがために、活性化イベントなどを積極的に展開していきます。

 

各自治体の人々は「都会から戻ってきた人々」「危機感を持っている地元の人」との会話をすることをおススメします。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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