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2022/01/07

出る杭は打たれる

中川淳一郎

中川淳一郎

日本の地方(特に田舎)はこれまでの人生で色々行ってきましたが、若干違和感のある発言があります。それは「あの人は目立っているから…」という発言です。東北でも北陸でも北関東でも九州でも聞いてきた言葉です。恐らく日本全国で言われている言葉でしょう。もしかしたら、大都会でも商店街や伝統ある町内会では言われているかもしれません。

 

軽井沢や熱海のような別荘地や人気移住エリアであれば、都会のように他人に関心を持たない生活ができるでしょう。しかし、そういった場所は日本の中では少数派では。

 

「あの人は目立っているから…」に何が続くのかといえば、何もないことが多いです。悪いニュアンスで言っているのですが、何が悪いのかまでは言わないことが多い。恐らく「地元の人々は困っている」や「自分勝手だ」「チヤホヤされて調子に乗っている」といった言葉が入るのでしょう。

 

この言葉は昔から地元に住む人でも、外から移り住んできた人に対しても言われる言葉です。都会から帰ってきたやり手の人物が地域の開発を必死にしようとすると、若干前のめりな面はありつつも、その人は街おこしに真剣に取り組んでいる。それに対し、「あの人は上から目線だ」や「都会にいたことや高学歴であることを自慢している」なんてことを言われてしまいます。

 

 

外から来て地元を盛り上げるべくレジャー施設の開発などを行う人物から話を聞いたのですが、初期の頃、凹んでしまった言葉があるそうです。それは、「アンタ達が余計な開発をしてしまったから、他県ナンバーの車で渋滞が発生して不便になった。ハッキリ言って自分には煩わしいだけです」だそうです。

 

もちろん、地元の小売店などは客が増えて嬉しいでしょうが、年金生活者や、この地に住み、車で職場まで通勤している人からすれば、観光客の増加はそれまでの平和な生活を脅かす存在に見えてしまう。こうしたことを理解したこの人物は「自分は自分の活動は正しいと思っている。そういう意見を言いたくなる気持ちも分かるが、自分に開発を頼んでくれた地元の人や、その考え方に共感する人の方だけを向くことにしました。全員を満足させることなんてできません」と今は考えています。

 

当然同氏は「分断を望んでいる」や「逆排斥」「聞く耳を持たない」というわけではないのですが、こうした目立つことをやる人に反感を持つ人が登場してしまうと恐ろしいのが、悪評のみがその人に対する共通の会話になってしまう点。

 

恐らく古くからいる地元民同士の会話では、「渋滞が困る」「ガラの悪い連中を見るのが耐えられない」「治安悪化が怖い」といった声もあることでしょう。ただ、こうした意見だけを聞いていると、街は衰退に向かうだけです。そうなった時に「あの目立ち過ぎるヤツをもっと自由に動かしておけば良かった」なんてことを言い出すかもしれません。

 

「出る杭は打たれる」は実に正しいことわざだったのだなぁ……と時々感じます。それにしても半沢直樹をはじめとしたドラマの主人公、NHKの朝ドラヒロイン、映画に登場する破天荒な目立ち過ぎる人々は称賛されるのに、そういった破天荒な人物がいざ生活圏に見えてしまうと複雑な気持ちになる二重基準、不思議です。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。現在はライターに戻りひっそりと暮らしている。

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