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2022/08/04

在京メディアがつくる、日本の空気

中川淳一郎

新型コロナ騒動のこの2年半、「知事とその自治体が目立つためには規制を強化する発表をし、リーダーシップを見せる」というやり口がすっかり定着しました。「3つの密」をはじめとしたフリップ芸や「東京アラート」「オーバーシュート」「リバウンド」といったキャッチ―な言葉を駆使し、コロナ初期に目立つことに成功したのが小池百合子・東京都知事。

 

その後埼玉・神奈川・千葉の知事も「足並みを揃える」などと言い、4人で会見をしたことなどが多数報じられ4知事のリーダーシップが当初は絶賛されたのです。そこから北海道・山梨・愛知・岡山・徳島・大阪・鳥取・島根・沖縄の知事らが規制を強化し目立つことに成功しました。

 

彼らのやり口には正直嫌悪感しかないものの、地方の自治体が東京のメディアから注目されるには、「この手があったか」と思ったのは事実だし、各知事の戦略は「目立つ」という目的を果たすうえでは最善のものだったでしょう。

 

各自治体は、それぞれ東京のメディアが注目するテーマがあります。記者・編集者・ディレクターの興味がどこにあるか次第です。そこに沿った話題であれば、全国ニュースになることができる。いくつか挙げるとこんな感じでしょうか。

 

北海道:夕張市の人口減少、ニセコ町の物価高騰、札幌雪まつり、北海道で気温35度を超えた場合、旭川でマイナス20度になった場合、JR北海道の路線廃止

 

福島県:福島原発をめぐる「帰還」「処理水の海洋放出」「農作物・水産資源への風評被害」「原発そのものの是非」

 

富山県:雪がどれだけ積もるか、ホタルイカの収穫期、寒ブリの相場

 

沖縄県:米軍兵士が起こす問題、基地問題、環境破壊、日本復帰〇年、戦争犠牲者、荒れる成人式

 

北海道・仙台・名古屋・大阪・福岡については各地独自の巨大メディアがあるため独自情報をキー局経由で全国で流すことは可能です。たとえばTBS系の昼の情報番組『ゴゴスマ~GOGO!Smile!』は、名古屋のCBCテレビによる制作です。登場する観光地や店がやたらと名古屋が多いのはそれが理由です。

 

上記で挙げたような地方県としてはコロナは目立つ千載一遇のチャンスだったわけです。山梨県がとにかく飲食店に厳しい規制をつけて「山梨モデル」と絶賛されたり、島根県知事が「聖火リレーは島根に来るな」と言い感染対策がなっている! とホメられたり。

 

結局小さな県で全国的な話題になることなんて「災害」「凶悪事件」「乱交パーティ摘発」「県警による不祥事」「地元議員によるセクハラ」「横領」ぐらいなんです。あとは、全国的ニュースに関し、関連するものがあった、とかですね。

 

2018年、山口県大島郡周防大島町で行方不明の2才児が行方不明になった際、警察も地元の人も見つけられなかったのに、大分県在住の「スーパーボランティア」として知られる尾畠春夫さんが見事に発見。これにより大分県は全国ニュースになりました。こんな良い話だけだといいのですが、私の地元・佐賀県については良い全国報道は珍しいです。個人的に印象に残っているのは、愛知県の大村秀章知事のリコール活動の際、署名の筆跡が同じだったことが明かされました。その際、佐賀県のバイトがこの署名をしたことが報じられた時のこと。

 

佐賀県民はおっとりとしているイメージがあるのですが「なんか時給も悪くないしラクそうなのでやっちゃった」的なノリだったのかな、とも思いましたが、決して名誉ある報道ではありません。あとは知床の観光船の沈没で有田町の男性2人が死亡し、1人が行方不明になったことから、男性の知人の取材のため有田町に取材陣が行ったこともありました。

 

今回、特に「活性化」に関する処方箋は何も書きませんでした。淡々と現状を書きましたが、結局日本の空気というものは東京のメディアが作っています。その厳しい現実を地方の人々は今一度理解しておいた方がいいでしょう。結局、日本で話題になるテーマは東京のメディアが扱うかどうかにかかっているのです。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。現在はライターに戻りひっそりと暮らしている。

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