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2022/08/10

東京を経験すること

中川淳一郎

インターネットがあれば、都会と地方の格差は埋められる――かつてこんな言説がありましたが、残念ながら、これは無理だったのではないかと今感じています。本コラムは地方創生について執筆していきますが、今回は都会を経験する重要性について書いてみます。いや、もっと言うと東京を経験することです。

 

私が東京・渋谷から佐賀・唐津に拠点を移して1年9ヶ月が経ちました。佐賀新聞の連載で新規のレギュラー仕事と本コラム、講演等の新規業務は獲得できたものの、現在の仕事のほとんどは東京時代に獲得した仕事です。唐津で付き合っている人の中にも東京経験者は意外に多かったです。寿司店の大将やステーキ店のシェフが東京の名店で修業をするのはよくわかります。しかし、駄菓子屋の店主が、東京の菓子卸問屋で修業したという話を聞きました。また、リクルートで働いていた人が今は街の活性化の仕事をしている。

 

あと、佐賀県庁の職員の12%は転職組だそうで、この割合は日本トップ。東京のレコード会社→IT企業という経験をした人物が転職したり、名古屋の自動車関連の企画をしていた人物が転職してきたりします。そして最初から職員だった人であっても、広島・神戸・東京の大学へ行った人や、福岡の専門学校に通った人もいます。こうして都会を経験した人材は、地方の発展に必要だと感じています。もちろん、地場の産業を徹底的にやり続ける人材も必要なのは言うまでもありません。

 

こうした前提があったうえで、ネットの話に入っていきますが、顕著なのが私がやっているライターという仕事です。残念ながら、地方ではライターの仕事が少なすぎるし、ギャラも安いです。正直、自分が最初から唐津でライターを目指していたら、数年で挫折していたと思います。市の広報誌の制作等にかかわるのが精一杯だったでしょうし、著書を連発させることは無理だったはずです。

 

結局東京で会社員生活を始め、ありとあらゆる活字メディアが存在する東京で編集者の知り合いを多数作れたことが、今に繋がっているのです。だから、私は福岡や名古屋でライターをやっている人、いや、大阪も含めてライターで食っていけている人を素直に「すごい」と思います。自分は過去の東京の遺産で食っているだけですから……。

 

あと、結局、お金は東京に集まるんです。そうしたら商売相手も東京の会社を押さえておいた方がいいです。地方の人がそれなりに「おいしい」仕事を獲得するためには、一年でもいいから東京で生活し、仕事のツテを作っておいた方がいいです。別にこれはフリーランスだけ、ということではなく、会社員であっても同じ。東京に取引先を作ることによって、「外貨」を地元に持ち込むようにするのです。

 

最初のとっかかりは、地元にいる東京経験者に相談するといいでしょう。そうして営業先を増やしていけば、売り上げ増加と地方活性化につながるかもしれません。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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