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2022/12/27

“デカいもの”がもたらす恩恵

中川淳一郎

地方活性化において、案外重要なのが「デカいもの」なのでは、という気がしています。2022年8月、石川県能登町がコロナ対策費を使って作った巨大スルメイカ像「イカキング」の経済効果約6億円になると報じられました。全長13メートルのこの像は建設費が2700万円で、そのうち、2500万円がコロナ対策の地方創生臨時交付金で賄われました。この時は「無駄遣いだ!」との批判が巻き起こりました。

 

しかし、この像を見るために多くの人々が押し寄せ、経済効果が約6億円になったという報道がされたのです。そうです、地方活性化には「巨大なもの」は何かと役に立つのです。これは人間の本能ともいうべきものなのかもしれませんが、「巨大建造物」は観光資源になり得ます。もちろん「巨石」や「巨木」も含めて、です。

 

私の知人に大仏マニアがいて、全国各地の大仏めぐりを趣味としています。歴史ある大仏だけでなく、コンクリートで作ったような大仏であっても、「とにかくバカでかい仏像が好き」ということで、各観光地にお金を落としています。ちなみに彼女が一番好きなのは、1954年に愛知県江南市で完成した高さ18メートルの「布袋大仏」です。

 

確かにこの傾向は私にもあり、歴史の有無はさておき、世界一背が高い「牛久大仏」はいつか行きたいです。そして当然のごとく鎌倉の大仏、奈良の大仏、大船観音、千葉・鋸南町の「薬師瑠璃光如来」も見に行きたい。福井県へ出張した知人から送られた福井駅前の巨大恐竜も見たいです。さらに言うと、東京・新宿の「TOHOシネマズ新宿」の巨大ゴジラも大好きです。

 

佐賀市の「巨石パーク」も行ってみたい。あ、これは人間が作ったものではありませんが、とにかく巨大なものというものは、わざわざ見に行く価値があるものという考えを持つ人は一定数いるのです。

 

思えば、海外旅行でもそうです。私が世界で一番好きな日本以外の都市は、タイ・バンコクですが、寺院「ワット・ポー」の巨大寝釈迦や、アユタヤの巨大寝釈迦も大好きです。こうした巨大なものを見ていると何十分もぼけーっと時を過ごせます。だから、伝説の「ロードス島の巨像」などはもし今の世の中にあったら見たいと思いますし、サンパウロのキリスト像も見たいです。バベルの塔もあったら見に行きたいですし、歴代大統領の顔を掘ったアメリカのラシュモア山も見たい。

 

 

かくして巨大建造物・建築物は人々のロマンを掻き立てるものです。現在、私は佐賀県唐津市在住ですが、「巨大」とまでは言わぬまでもユネスコ世界遺産・唐津くんちの「曳山」はずーっと見ていたいですし、唐津城も大好きです。

 

 

今回の能登町の巨大イカについては、当初「補助金の無駄遣い」と散々叩かれたものの、その造形のかわいさから多くの人が訪れたのでしょう。SNSでの「映え」スポットというものは、これからの時代、重要な観光資源になるのではないでしょうか。

 

そして、これらの巨大なものが時を経るにつれ、どことなく味わいを深め、ますます魅力的になる――なーんてことも思うわけです。となれば、巨大建造物として「かわいい」「かっこいい」「一緒に写真を撮りたい」ものを数千万円かけて作り、将来への投資にするのもアリかもしれないな、と思うものです。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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