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2022/12/27

弱みを強みに…メディアと住民と

中川淳一郎

毎年冬の情報番組の恒例は「最強寒波」などが到来した時に北海道へ行くことです。リポーターが「こんなに雪が積もっています!」「自動車がスリップして横転しています」「あまりに雪が吹いていて前が見えません!」「あぁぁ! 滑りそうです!」「雪かき・屋根の雪下ろしをする人がいます」と驚くのが定番です。

 

この映像を見ると、関東出身・九州在住の自分は「よくこんな凄まじい場所に住めるな……。暖房費用もかかるだろうし、買い物もしづらいし、雪下ろしの時にケガしたり自動車事故に遭わないかな」と思ってしまいます。

 

2013年3月、北海道湧別町で、ホワイトアウトの中、9歳の娘を守るべく覆いかぶさった父親が凍死する事故がありました。この時に雪国の恐怖を感じたものです。もちろん、スキー場があるようなところに住むのは十分理解できますが、平地の豪雪地帯は一体どういった魅力があるのか――。これがこうした「すごい雪です!」報道では一切見えてこないのです。

 

本当は、テレビのリポーターは「夏は涼しくてラベンダー畑が見事な光景を見せる場所ですが」などとフォローをしてあげてもいいのに、と思うのですが、さすがに彼らにそれをアドリブで言わせるのも酷というもの。

 

だったらせめてその自治体の広報は、取材陣が来るということが分かったところで「町(市)としての雪対策の取り組み」「極寒時期以外の時の魅力」を取材陣に伝え、短くてもいいからそのコメントを使ってもらうよう働きかけるべきではないでしょうか。

 

それができなかった場合にしても、或いは取材陣が来ることが把握できていなかったとしても取材された町民・市民から「取材が来た」の連絡をメール・問い合わせフォームでするよう依頼をするが大事だと思います。なぜかといえば、必ずこういった取材の結果が放送された時は「北海道〇〇町」のテロップが入り、少なくない視聴者がその〇〇町について検索するからです。

 

或いは、放送されたことを職員が確認した場合と住民から「放送されたよ」の連絡が来た場合は、すぐさまその番組内容を把握したうえで、「本日放送された××(番組名)での〇〇町の豪雪に対する補足」をすぐにHPに公開する。

 

別にケンカ腰になる必要はなく、住民を安心させるのと、域外の人の恐怖感を和らげることを目的とします。取り上げられたらすぐにその自治体は「夏の様子」をHPなりSNSに掲載し、「大丈夫です。我が町はこんなに春夏秋は過ごしやすいですし、こんな観光名所もあります!」をここぞとばかりに掲載する。

 

何しろ、広告費をかけることなく、タダでその市町の名前が出るんですよ! 検索が一気に増えるのは間違いないため、そのチャンスを逃す手はありません。

 

この「寒さ」とは逆に毎年「暑い」でも。常連は埼玉県熊谷市、群馬県館林市、岐阜県多治見市。高知県四万十市も41℃を記録し、話題となりました。41℃達成時、四万十市の店は通常100円のかき氷を41円で出して長蛇の列。熊谷市では銭湯がクールかき氷シャンプーと生ビールを41円で発売。

 

いずれもテレビが取り上げ、市の知名度は高めたものの、しかし、「暑いから行きたい」となるかな(笑)とは思います。上記「寒い場所」のやり口と同様に「熊谷は秋は普通の気温です」と観光名所を見せるのもアリではないでしょうか。

 

とにかく、極端な気候の場所は、メディアの取材機会があるため、その際は報道に相乗りし、漁夫の利を得る作戦をしてもいいのではないでしょうか。

 

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

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