PAMPHLETDOWNLOAD
戦う歴史学者平山 優

TOPCOLUMN > 地域の言葉について

2022/11/10

地域の言葉について

中川淳一郎

東京に住んでいた時に不思議な感覚だったのが、「大阪出身者以外は地元の言葉を喋らない」ことです。大学1年生の時に実感したのですが、とにかく大阪出身者の一定割合は大阪の言葉を貫き通す。別にこれを非難したいわけではありません。「なぜ、他の地域出身者は地元の言葉を喋らないのか?」という疑問の提起です。大阪出身者・Hさんとの会話でまったく嚙み合わなかった時の話です。

 

私:今日は家でメシを食べる約束になっているから飲み会には行けないなぁ。

H:自分、寮ちゃう?

私:Hさん、寮なの? アパートで一人暮らししてると思った。

H:いや、自分が寮なんか、と聞いてんねん。

私:だから、オレは実家、Hさんは寮じゃないでしょ? アパートでしょ?

 

まったく噛み合わない会話です。この時初めて知ったのですが、大阪人が「自分」と問いかけてきた場合「あなた」の意味だったのです。私の頭の中は彼女の問いかけに対して「なんでオレが今日は飲み会に行けない、と言っているのにこの人はご自身の寮の話をするのか?」と思いました。しかし、会話を続けると「自分」とは「あなた」の意味だったのです。Hさんが言いたかったことは「あなた、今日は家でメシを食べると言っていますが、寮住まいだから家とか関係ないでしょ?」ということだったのです。

 

大阪人が地元の言葉を他の地域で喋ることについては批判もありますが、こうしたミスコミュニケーションさえ改善できれば批判すべきではないのでは。だって、首都圏のいわゆる「標準語」を喋る人は、地方に行くと標準語を喋るわけですよね。それこそ「地元に合わせていない」ことの表れです。

 

むしろ、地方の人が首都圏の人が来た時に気を使って標準語を話してくれる。恐らく、テレビやラジオで出演者が喋る言葉がどの地域でも標準語であるため、地元の言葉と標準語両方を駆使できるのでしょう。

 

一方、首都圏出身者は、地方に合わせることが難しい。なんというか、そこはかとない閉鎖性を感じることがあるのです。時代劇等で関東出身の俳優が京都弁を喋ると、京都の人から「イントネーションが違う」と言われます。俳優に限らず、付け焼刃の地元言葉を喋ると「変な〇〇弁やな」などと言われることが多い。それはやめた方がいいと思います。その首都圏の人は、なんとか馴染みたいと思って、その土地の言葉を自分なりに解釈して喋るわけです。

 

冒頭の大阪弁に戻りますが、「あらへん」という言葉があります。首都圏の人は「あ↑らへん」という発音になりますが、大阪の人からすれば「あ↓ら↑へん」と発音されなくてはムズムズとしてしまう。

 

海外の人が「チョットイイデスカー」なんて言ってきたらそれは咎めないのに、日本人だったら微妙なニュアンスの違いを咎める。それだけで狭量な土地柄だと思われてしまいます。

 

最後はちょっとした小ネタで締めますが、魚の名前って土地によって違いますよね。私が唐津に来て釣りをしていたら「アラカブ来よったー!」と同行者が大興奮(今回の写真で私が釣り上げた魚がアラカブ)。初めて聞いた魚の名前だったのですが、関東では「カサゴ」。他にもクロダイのことを「チヌ」と呼ぶなど、日本の方言は奥深いものだと感じるものです。

中川淳一郎

1973年東京都立川市出身。1997年に博報堂に入社し、CC局(現PR局)に配属される。2001年に退社し無職を経てフリーライターに。以後、雑誌テレビブロスの編集を経て2006年からネットニュース編集者に。2020年8月31日をもって「セミリタイア」をし、11月1日から佐賀県唐津市に引っ越す。2023年2月いったん唐津市を離れ、現在タイ・バンコクにてひっそりと暮らしている。

バーチャル背景でリモートワーク、旅の気分を楽しもう!

FREE DOWNLOAD